読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々11

 

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読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々10 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻までこの作品はシリアスなバトル続きであり、ひきこもりたい我らが主人公、コマリも散々常世を冒険する訳となり、悲しい別れを経験したり、それと同じくらいに新たな出会いを得た訳であるが。前巻の最後、二つの世界が無事に繋がった事で、久しぶりにムルナイト帝国へと帰還する事が出来た訳で。第三部開始前、久しぶりに息抜きしましょうという訳でほぼオールスターキャストなコメディ展開目白押しなのが今巻なのである。

 

 

 

「それにコマリ。きみは今、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているぞ」

 

が、しかし。やっぱりコマリは引きこもれる、という訳にはいかなかった。常世の探索はベテラン任せ、帝都で起きている誘拐事件の捜査も出番なし。では何があるのか。それは七紅天に定められた三か月に一度、戦争で勝たなければいけないと言う契約。今更にも程がある、というか仕方ない事情があってもカウントは止まらんのかとツッコミたくなるがそれは置いといて。死を避ける為に、コマリは最近負け続けであるラぺリコ王国からの宣戦布告を受ける。挑んできたのは友情が芽生えた筈のリオーナ。国の威信をかけて世論を見返す為、彼女は三対三の烈核解放禁止という特別ルールでの戦争を挑んできたのだ。

 

さて勿論、烈核解放が使えなければコマリは雑魚でしかない。という訳で久方ぶりに味方を騙さねばならない。ヴィルや部下のヨハンの助けを借りながら、必死で生き残る為に頑張って。戦争の後に描かれるのは、様々な者達の日常。

 

天子としての仕事を果たす中、リンズが復帰したシーカイの知恵を借り仲良くなるための作戦へ挑み、それを阻止しようとするヴィルが何故か麻雀対決をしたり。

 

逆さ月のメンバーに実権を握られたクレメソス504世が社会科見学にやってきて、ちょっと蛮族的な交渉方法を学んでしまったり。

 

あまりにコマリを好きすぎるサクナがコマリ断ちを命じられ、元将軍であるメイジーの監視の元で禁断症状を出しながらも頑張る中、将軍として本当に大切なことに気付いたり。

 

いずれもシリアス続きだった日々の中からは考えられぬほどの時間。そこにあるのは基本的に笑顔。時に困り、時に悩んだりしながらも。大切な日々がそこに在る。

 

「お前は狙われているぞ、テラコマリ」

 

だけど穏やかさは長くは続かない。愚者の脅威は未だ去っておらず、彼女達の知らぬ所ですでに動き出している。ならば後の激突はもう、防げないのだ。

 

新章前の小休止、くすりとした笑いに溢れる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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