前巻感想はこちら↓
読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々6 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今の今まで何だかんだと勝ち進み、救うべきを救えて来た我等が主人公、コマリであり何だかんだと成長してきたわけであるが、この先さらに一歩踏み出す為には何が必要であると画面の前の読者の皆様は思われるであろうか。彼女が更なる段階へ踏み込む為には、一体何の経験が必要であると思われるであろうか。
その答えとして「責任感」、そして「挫折」を上げられる読者様はどれだけ折られるであろうか。己に秘めた多大なる力、その力を自らの意思で振るうと言う責任感。そして挫折を経験したことのない者は得てして折れやすいもの。だからこそ一度、その心をへし折った方がより強く仕上がると言うもの。
その成長の階となるのが今巻、神秘の国である「夭仙郷」での大冒険。そしてコマリの成長を促す鍵となるのが、かの国の姫であるリンズ(表紙左)との出会いである。
前巻、助けを求められ快く引き受けるも一先ずは動くべき時を伺う中、コマリの中で何故か膨れ上がっていくリンズへの思い。まさか恋かとヴィルが疑う中、新聞によりリンズとかの国の丞相であるシーカイの結婚の一報が知らされる。
「こんなもの見せられて黙っていられるわけないだろっ!」
その一報を聞き、コマリは彼女にしては珍しく自分から動く事を決意し。今まで縁を結んできた他国の面々を巻き込み、リンズ救出作戦の段取りを打ち破って彼女を強引にでも救出して見せる。だがしかし、彼女は未だ何も知らない。何故彼女がここに来たのか、という事も。リンズが秘める彼女自身も知らぬ秘密と言うものも。
それは作られ誘導された思い。それでも良いと、真っ直ぐな瞳と思いでコマリは宣言し、シーカイとの対決へと向かう。
だが、その最中シーカイの裏で糸を引いていた真の黒幕の作戦が発動し、仲間が囚われ利用されてしまう。
そして、かつての戦いの後始末ともなる黒幕との戦いの中で判明する、シーカイの本当の思い。佞臣に見えた彼が心の中に秘めていた、本当の思い。
「お前が今まで上手くいきすぎていたのだ。失う恐怖を知ってこそ人は強くなれる」
戦いの果て、リンズの血を代償に目覚める新たな力。しかしそれを以てしても彼女を救う事は出来ず、救えぬ無力にコマリは吼える。
初めて知る、この誰も死なない世界で誰かが死ぬという恐怖。大切なものを失うと言う今までの全てを無くしてしまう結果の本当の意味。
それを知り、新たな国と友誼を結び。しかし、状況は予断を許さず混迷へと加速していくのである。
シリーズファンの皆様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。