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読書感想:親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない。 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、じれったくてもどかしい、心震えるラブコメを繰り広げている陸と碧の二人であるが。残り一歩がもどかしい、あと一歩なのに。というのは前巻を読まれた読者様であればご存じであろう。この二人が次に進む為には、何が必要なのであろうか。それは簡単。過去に向き合う事である。きちんと乗り越えるべき所を乗り越えてこそ、本当の意味で踏み出せると言えるのかもしれない。
体育祭を通して少しだけ、お互いの心に触れて。そんな二人が迎えるのは夏休み。部活でレギュラーを逃した銀次の提案により、いつもの四人で海に行くことになり。資金を得るために銀次の親戚が経営する海の家で短期バイトを行う事となり。何とか期末テストを乗り切り、夏休み。海の家でのバイト生活が始まろうとしていた。
「久しぶりじゃん、こんなところで何やってるの?」
だが、それは波乱の幕開けに過ぎなかった。海の家に先んじてバイトとして採用されていた少女、香乃。彼女は陸と碧にとって知己の相手であり、陸がかつて告白してフラれた相手だったのである。
警戒を抱く間もなく、ナンパされる彼女を助けるために仕事を抜け出して碧に嫉妬され。間違えてお酒を飲んでしまった碧が、新しく買った水着を陸に見せつけて、悶々とさせたり。まるで過去の事を気にしていないような香乃の態度に陸は振り回され。その様子を見て碧は心を揺らし、やきもちを焼いて彼に接近しようとする。
だがこれは、先へ進む為に必要である事。切り捨てた筈の心が痛む、碧に向き合いたいのに、心が香乃から目を離させてくれない。日々忙しく、時には問題も発生したりするバイト生活の中。二人はそれぞれ、己の過去に向き合っていく。それぞれ進む為に、必要なものを見つめていく。
「お互い、人間関係築くのが下手クソだったってことか」
陸は、あの日と同じ意地悪な問いを投げかけてきた香乃と向き合い。何故、あの日はという事実に触れ。勇気を出した香乃に背を押され、彼女との友情をもう一度始める。
「もう過去には戻れない。それを、ちゃんと自分で確認しなきゃ私は前に進めない」
そして碧は、前に進む為に己の過去、心残りを清算する道を選ぶ。例え挫折に終わると分かっていても、前に進む為に。己のやり残しを、拾いに行く事を決める。
「その時は、ちゃんと聞いてくれる?」
「ああ」
その果てに伝えたい思いがある、聞いてほしい。ここに交わすは新たな約束。未来で結ばれるための、進む為の約束なのだ。
ちょっと切なさのある中に、深まるじれったさが堪らない今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない。2 (角川スニーカー文庫) | 三上 こた, 垂狼 |本 | 通販 | Amazon