読書感想:少年、私の弟子になってよ。 ~最弱無能な俺、聖剣学園で最強を目指す~

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。創作の世界においては様々な師匠キャラがいると思うが、皆様は師匠キャラと聞いて連想されるのはどんな人物像であろうか。厳しく接しながらも時に優しく、いざという時には守ってくれる師匠だろうか。それとも、普段はおちゃらけているけれど、肝心なシーンでは格好良く決めてくれる師匠であろうか。

 

 

突然、全人類に様々な固有の能力を持つ「聖剣」が宿るようになって早四十年。聖剣という存在は、日常に受け入れられ。聖剣を用い行われる競技、「聖剣演武」は人々を熱狂させる一大エンターテインメントとなっていた。

 

「この剣星ラディの弟子となれ。きみに頂きの景色を見せてあげる」

 

 だが、何事にも残酷な例外はあるらしい。日本の片田舎に住まう少年、識には終ぞ聖剣は宿らず。それでも交わしたとある約束の為、諦めきれずに「聖剣学園」を受験するも、そもそも聖剣が無い故に叶う訳もなく。夢破れた彼の前、現れたのはかつての世界最強、ラディアータ(表紙)。不慮の事故で引退した女性であり、識の約束の相手である。

 

彼女が差し出したのは、世界大会で手に入れた世界最強の証である聖剣である「無明」。それを保持できる期間は三年間。つまり、識が三年以内に世界のトップに立ち、その位置に立ち続ける限り、彼はこの世界で戦う資格を有する。唐突に開けた夢への扉、その手を取らぬ訳もなく。ラディアータを師匠とし、無明の力を引き出すための特訓をしながらも。聖剣学園に入学した彼は、様々な聖剣持ちと出逢っていく。

 

初めての友人である、ラディアータのファンとしての同士であるピノ。入学試験で争った相手である、下種、に見えて実はツンデレなだけの麒麟児、比隣。

 

時にぶつかり合い、時に切磋琢磨し。ラディアータと集中して特訓しながらも、時に彼女が思わずついた悪気の無い嘘で傷ついて、ストライキしてしまったり。

 

「本当に、きみは私をびっくりさせる天才だ」

 

 ―――それでも譲れないものがある。負けたくない理由がある。そして識には、確かに持っているものがある。それは努力という天賦。約束のあの日、ラディアータを唯一蕩かせた輝き、それは「無明」もまた惚れ込み、求めたもの。求め続ける心に力は応え、覚醒が果たされる。

 

「そして、俺が求めてる」

 

誰もが求めていないとしても、彼女が、そして自分が求めている。だからこそ譲れない、立ち止まれない。―――そこを退け、切り開いてでも進んでやる。 求めるものを手繰り寄せ、識は最強の力を片手に世界に宣戦布告を果たす。

 

立ち塞がるのは六十億の凡夫。それがどうした押し通す。そう言わんばかりの熱さがあり、真っ直ぐに心燃えるこの作品。熱い作品が読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

少年、私の弟子になってよ。 ~最弱無能な俺、聖剣学園で最強を目指す~ (電撃文庫) | 七菜 なな, さいね |本 | 通販 | Amazon