読書感想:わたし、二番目の彼女でいいから。5

 

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読書感想:わたし、二番目の彼女でいいから。4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻までが一区切り、修羅場に修羅場を重ねて煮詰め、地獄をこれでもかと描いて見せた今作品であるが、今巻からが新たな始まり、大学生編である。前巻の終了後、二年。果たしてここから始まるのは青春ラブコメ、なのだろうか。画面の前の読者の皆様は一抹の希望を抱かれているかもしれない。その答えはどうであるのか。それは是非、皆様の目で見届けて欲しい次第である。

 

 

「友だちだからだよ」

 

さて、それはともかく我らがクズ、主人公である桐島は何をしているのかと言うとであるが。大学二回生となった彼の姿は、京都にあった。誰にも告げず京都の大学に入学し、灰色の季節を過ごしながら。自罰に沈み続ける所を、ボロアパートの隣人である福田くんに救われ、妙な方向の愛に目覚め。気が付けば高下駄を履いて着流し姿、といういつの時代の人間だとツッコミたくなるようなイメチェンを果たしていたのである。

 

そんな彼は福田くんや、先人である大道寺さん、そして色々な縁で知り合った女学生、遠野(表紙右)と宮前(表紙左)と仲良くなり。新たな友人グループを形成し、今度は恋なんかしない、と。心を殺しながらも生きていた。

 

・・・嗚呼、ここまでで終わっていれば。この作品はどこか古めの浪漫ある、青春ラブコメとなっていたのかもしれない。だが、人は何処までいっても幸せを求めるものであるとするのなら、一度知った幸せを、求めずにはいられなかった。そして、どうも過去の因果も。思ったより強力に、桐島に絡みついていたらしい。

 

何故か腐れ縁と言わんばかりに、追いかけてきた浜波。期せずして再会する、かつての級友。福田くんの思いを応援したい桐島に、彼が好きだと迫る遠野。その思いを知ってか知らずか、危険な誘惑を醸し出す宮前。

 

「忘れていいよ」

 

そして、皆で行った海。そこで、まるで運命的に再会した早坂さん。今でもまだ好き、思いを捨てきれぬ。だからこそ一緒に居ちゃいけない、お互い勝手に幸せにならなければいけない。知らぬ顔で、知った声音で。様々な意味で成長した彼女に背を押され、桐島は遠野の元へ送り出される。

 

「忘れられない男の人がいて、京都まで追いかけてきたそうです」

 

・・・だが、これもまた忘れてはいけない。「彼女」がいて、「彼女」がいない事なんてあり得ないと。実はすぐ側に居た彼女。その再会は、何を生んでしまうのか。

 

地獄の底、かと思いきや更なる扉の先、何も見えぬ無明の沼に引きずり込まれていく今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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