読書感想:ミモザの告白3

 

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読書感想:ミモザの告白2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、青春とは時に苦しいものであり、時に暴走するものである。大人であれば制御できる感情が、青い子供達には制御できず、思わぬ形で発露してしまう事もある。前巻で、本格的に動き出したこの作品は、今巻から青春群像劇としての色が高まっていくのである。誰しもが主役であり、時にぶつかり合う舞台へと変貌していくのだ。

 

 

「別に勝ち負けはどうでもいいんだよ」

 

前巻、多くの女子達に受け入れられだした汐という存在。その表れは球技大会の中にもあり、女子の部に混じって参加しても反対の声は巻き起こらなかった、という事実に咲馬の心には安堵が浮かぶ。

 

「戻ってこい。男子陸上部に」

 

だが、やはりまだ受け入れられる者ばかり、というわけにもいかなかった。汐の元に接触してきたのは、かつての部活の仲間でありライバルでもあった少年、風助。「男子」として戻ってきて欲しいと願う彼に一方的に勝負を突き付けられ、汐も売り言葉に買い言葉でカッとなって、勝負を引き受けてしまう。

 

「可哀想って、どういう意味だよ」

 

「そのままの意味だよ」

 

 彼女のサポートに回り、共に練習に励む咲馬。だがそれと同時に、彼等にとっては少し離れた位置でもう一つの事態が進行していた。それはクラスの「元」女王であるアリサの暴走。前巻の顛末を経て、更に遠巻きにされる彼女に何故か執拗に、それこそ獲物をいたぶる猫のように絡んでくる慈。彼の執拗な、けれど的を射た言葉にアリサの心は激情へと傾き。遂には暴力という形で発露してしまう。

 

「どうしてあんなふうになっちゃったのかねぇ・・・・・・」

 

慈に指摘された、自分の恋心をばらした存在。それに該当しそうな人間を疑い、更には疑心暗鬼になって全てを疑うようになってしまい。周囲から憐憫を込めて見つめられているという事にも気づかず、犯人を捜して暴走し、あまつさえ親友さえも傷つけてしまい。やっと自分が犯した間違いと、自分が置かれた現状を知った彼女の元に現れた慈は、犯人なんて最初からいなかったと嗤い。頭の中で一線がふつりと切れたアリサは、更なる事件を巻き起こしてしまう。

 

そんな彼女を支えんと、冬花や凛といった友人達が歩み寄り。赦しは得られずとも贖罪の機会を得、ようやくアリサは自分の背負っていた荷を下ろす事に成功する。

 

「あの子がとっても可哀想だからだよ」

 

「ぼくはさ、結構モテてたんだよ」

 

 だが、咲馬だけが一方的に知ってしまった、その感動劇の裏にあった感情。そしてそんなものはどうでもいいと欠伸に変えた汐は自信を以て、咲馬に自分の感情を明かす。

 

さて、痛みを超え青春は次は何を描くのか。この見逃せなさの先に間にが待つのか。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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