読書感想:ミモザの告白4

 

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読書感想:ミモザの告白3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、痛みを越え青春は次の段階へ向かう訳であり、ならば向き合うべきは汐と咲馬、それぞれの思いであるのか。と言いたい所であるが、まず初めにやらねばいけない事があるらしい。それは汐の家、槻ノ木家に刻まれた歪み。 それを誰の目を通してみるのか、というと汐の妹、操である。

 

 

そして操にとって、汐はどういった存在か。かつては自慢の兄、だった。だけど今は違う。セーラー服を着ているのを見た時から、憧憬は消え去って。使命感から元の道に引き戻そうとし。今ではすれ違った、軽蔑すべき存在なのである。

 

「だって、ここってそういう町だもん」

 

「ずっと、操の優しいお兄ちゃんでいてね」

 

振り返っていくのは何があったのか、今までのあった事。 告白を断った、といううわさから垣間見える汐の心と、本物の母親が亡くなる前、最後にかけた言葉。少しずつ遡っていく中、振り返るのは父親の再婚、母親の死、それを支えてくれた咲馬、そして最愛の母親の死。どんどん遡っていって、振り返られるのは色々な思い出。

 

「汐のこと、好きになりたいんだ」

 

「この町に残ることは、ないだろうね」

 

その振り返りを露知らず、咲馬は汐のことを好きになりたい、とデートに誘い。汐たちの間では受験勉強に関する話題が出るようになり、自然とこの町を出て行く、という選択肢が口から出てくる。過去を振り返り、そこに囚われている操とは違い、汐たちは未来に進もうとしていく。変化を受け入れられぬ操とは違い、周囲はもう受け入れていると言う事実が心をかき乱し、クリスマスの家出へとその行動の舵を切らせる。

 

義母からの心配の言葉、ムカつく想いのままに出てくるのは子供らしい我儘。それをあっさり、じゃあ行こうといった義母により始まるのは突発的なスキー旅行。その夜、旅館で、ようやくすれ違いだったばかりだった家族は向き合う事となる。

 

「お兄ちゃんがいい」

 

変わっていくものもある、優しさからかけられた重さもある。だけど、あのときみたいな後悔はもうしたくない、だから変わっていくところもあって、けれど変えたくない部分もあって。腹を割って話し合って、お互いの思いを伝えて。やっと家族は一つに纏まり始める。

 

「付き合おう」

 

そして、埋め合わせの初日の出。2人きりの場、告げられたのは咲馬の思い。

 

次巻、最終巻。いよいよ答え合わせ、最後の答え。そこに何が待っているのか、楽しみにしたい。