読書感想:ミモザの告白2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ミモザの告白 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で私はこの作品の感想を、面白さを語るには私の語彙力では一万の言葉を費やしても語り切ることは出来ぬ、と語った次第であるが画面の前の読者の皆様は覚えておいでであろうか。それは今巻においても変わらない。そして予め語っておくならば、今巻は円熟に向けて舞台を整えていく巻になると言う事である。

 

 

「あんなの、あり得ない」

 

前巻の最後、汐により咲馬へと施された「魔が差した」キス。その場面を夏希に目撃されてしまい、三人の関係に暗雲が漂い出し。汐が必死に否定し、夏希も半分程度の納得をする事によって、何とか三人の関係は首の皮一枚で繋がることになる。

 

 しかし、日々は歩みを辞めず。一学期が終わったのならば始まるのは夏休み。それは学生にとっては楽しいはずの時間。しかし、今年の咲馬にとってはそうは問屋が卸さなかった。何気ない日々を過ごしていても、昔のような気やすい関係に戻ったように見えても。起こってしまった過去は変えられず、意識しないように意識する事が、逆に意識させていく。

 

「二人は、付き合ってるんだよね?」

 

それは夏希も変わらず。三人で出かけた水族館、暗黙の了解のように封じた話題。けれどふとした瞬間、消しきれぬ疑念は鎌首をもたげ。咲馬の心に、向き合わなければいけぬ命題を思い出させていく。

 

 そう、向き合わなければならないのだ。咲馬は自分の思いに、夏希もまた、己の思いに。そして汐は、まだまだ続く周囲からの偏見と好奇に。

 

文化祭の出し物決め、決まったのは「ロミオとジュリエット」。そのジュリエット役に汐が推薦され、クラスの「元」女王であるアリサだけは反対するも既に受け入れていた級友達に異分子であると言う事実を突き付けられ。咲馬もロミオ役へと内定し、文化祭実行委員の仕事もこなしながら、稽古を重ね。周囲の思いに向き合い、汐に向けられる視線に触れていく。

 

「・・・・・・ゼロか百かじゃないんだよ」

 

 本番、緊張しながらも、汐に圧倒されながらも臨んだ舞台。その先、汐との改めての対話を経て、咲馬は自分の願いを見つけ出す。辿り着きたい未来、誰も傷つくことなく笑っていられる未来と言う願いを。

 

それは見果てぬ茨の道の先にしかないのかもしれない。玉虫色の答えであるのかもしれない。それでも、願う。だからこそ、ここから始まる。本当の意味での戦いが。

 

少しずつ、まるで遠回りする雛のように。何も変わらぬように見えて、少しだけ何かが変わり出す。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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