読書感想:小悪魔少女は、画面の向こうでデレている - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、素直になれずすれ違い、勘違いですれ違う。画面越しの恋だからこそ、お互いの事が本当の意味で分からない。そんな文人と千夜の恋であるこの作品は、果たして今巻ではどんな色を見せていくのか。早速期待しながら今巻の感想を書いていきたい。
前巻の最後で取り付けた約束。数年ぶりの再会、訪れたその時に千夜は敢えて黒髪のウィッグを身に着け挑み、再会を果たす。
「久しぶりだね、千夜」
だがしかし、それは致命的なずれを招く布石となってしまう。あの頃のように遊ぶ中、不意に髪に触れようとしたその手を千夜は跳ね除けてしまい。そのすれ違いを解消できぬまま、学校が再会されるのである。
当然のように、チャットのように一対一ではいられない。また皆との顔を合わせての時間が始まる中、文人に絡みつく因果が一つ。ちょっとした出会いから文人を利用する為に近づいてきた後輩の少女、告理である。虐めを受けている今の現状を覆す為に、文人を隠れ蓑として利用と近づいてくる彼女。
「キミの恋人が無理なら愛人で手を打とう」
更には、文人に告白を断られた筈のもう一人の「ミッチ」、満も諦めきれぬと文人へ迫る。彼の心を揺らそうと、懸命に迫ってくる。
嘘と思い、友情と願い。少女達の三者三様の心が交錯し、その間で文人が揺れ惑う。
一番でなくともいいから一緒にいたいという千夜の思い。
つまらぬ嘘をつくなと頑なに言う満の思い。
初めての気持ちを抱かせてくれる文人への、告理の思い。
だが、向かい合うべきは日々を重ねる中で文人は分かり出していく。向き合いたい人に向き合う為に、きちんと関係を清算し。満に背を押され、文人は千夜の元へ駆け出していく。
「―――貴方のことが好きです。貴方の恋人にしてください・・・・・・!」
「―――ぼくが好きなのはクラスメイトの久住千夜じゃない。幼馴染みの―――久住千夜だよ」
好きなのは君、「幼馴染」の君。だからこそ告白は自分から。胸に秘めた長年の想いを、きちんと正面から伝え合う。
「やっと気づいたの? ぼくは意地悪なんだ」
そして、灯り始めた星々が見守る空の下。二人で見つけるのはあの頃と変わらぬなつかしさと思い。お互いに共有した、あの日から変わらぬ思い。
より甘く、更に温かく駆け抜ける今巻。まだ告理関連で膨らませられそうな気もするが、ここで終わってもとても綺麗。果たしてどうなるのか。でもこの恋は美しいのは確かである。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。