読書感想:天使は炭酸しか飲まない2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:天使は炭酸しか飲まない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、誰かの恋の相談を聞き、その悩みを解決に導く「久世高の天使」こと伊緒であるが、前巻を読まれた読者様であればこうは思われたことは無いであろうか。もし二つの依頼の間、板挟みとなってしまったのならどうするのか、と。依頼の性質上、完全に中立であるべきだが、どうにも真っ直ぐすぎて完璧に中立、とは言い切れぬ彼。そんな彼がもし板挟みになってしまったのなら、どうするのかと。

 

 

その疑問の答えは今巻の中で語られる。早くも板挟みとなる時が訪れてしまうのである。

 

前巻、湊の窮地を姿を現し救った事で、「久世高の天使」は都市伝説から現実の存在となり。惚れっぽいと言う湊の噂も鎮火を始めた頃、伊緒の元に新たな依頼が舞い込む。

 

彼の元に依頼を持ち込んできたのは、バスケ部副キャプテンである先輩、創汰。彼の恋は片想いである。その相手とは、同じく先輩でもある「三大美女」の一人、冴華(表紙)。伊緒の目から見ても、正に完璧系と言える少女である。

 

『それまでに、どうしても彼を射止めたい』

 

 が、しかし。湊を通じ冴華からも依頼が舞い込む。それは三つ上の大学生の幼馴染、「響希くん」との仲を取り持って欲しいと言う事。つまりはバッティングである。悩んだ末、依頼の掛け持ちを決め、伊緒は二人同時に向き合う事を決める。

 

しかし、冴華の相談に乗る中で伊緒の心には微かな違和感が湧きおこり。それを確かめる間もなく、創汰が部活で動けぬ間に冴華から告白を成功させたと言う報告が舞い込む。

 

それでもと告白しようとする創汰を何とはなく煙に巻く冴華。その真意を確かめる為、冴華と面会し。二つお願いを聞く代わりに事情を知る権利を得、顔に触り確かめる。

 

だが、何も見えなかった。彼の能力を以てすれば、確かめられるのは絶対。なのに何故見えなかったのか。

 

そこに隠れていたのは冴華の過去。今まで意図せず多数のコミュニティを崩壊させてしまったという苦い経験から、誰とも仲良くせずいい子でいると言う思いの元についた嘘。

 

「お前は、助からなきゃいけない」

 

 既に彼女は助けを諦めてしまった。これでいいのだと受け入れた。でも、本当にそれでいいのか? もう放っておくには遅い、深入りしたからこそ助けたい。彼女に必要なのは何か。伊緒が齎すそれは、只の友情。ありふれた、けれど何も他意を持たぬからこそ大切なもの。

 

前巻にも増して更に面白さが深煎りされていく、独特の面白さ高まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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