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読書感想:わたし、二番目の彼女でいいから。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて前巻の最後に提案された衝撃的な提案。早坂さんと橘さんによる桐島の共有という提案であるが、一見すると誰も傷つかない優しさに溢れた提案、と見えるかもしれない。だがしかし、この作品を読まれている画面の前の読者の皆様はそんな事にはならないとお察しであろう。正しくその通りなのである。共有と言うルールが何を齎すのか。それ即ち、新たな不純に他ならぬ。
抜け駆け禁止等の様々な制約を設け、桐島を独占するシフトを決めて始まる共有生活。だがしかし、既に箍の外れた二人の思いがそう簡単に止まれる訳があるだろうか。お預けを食らって、暴発しないと言う保証が何処にあるのか。
「そこまでは全部していいんだよ?」
そう、ルールを作ってみても、人は何処かに抜け穴を探してしまうもの。最後まで行かなければいい、そこまでなら何をしてもいい。そんな言い訳を前面に押し出しながら、桐島の理性を橘さんと早坂さんがどんどんと揺さぶってくるのである。
三人でラブホになだれ込んで、危うく一線を超えそうになったり。
「歪んでるとか、どうでもいい」
柳先輩が橘さんの弱みに付け込もうと、苦しくも卑怯な手段に手を出す中、橘さんは桐島しか見ずに彼の醜い本心を引っ張りだしたり。
飲酒に始まり、イケナイものを摂取したり。橘さんが催眠術を言い訳にして小学生みたくなったり。何処まで不純を極めていくのか、まるでこの世全ての不純と背徳を混ぜ合わせるかのように。混沌がどんどんと深まっていく中、二人の隠しきれぬ思いは育っていく。ルールなんて破ってしまえと、心の内からまるで悪魔のように囁いてくる。
「だから、桐島くんと普通の恋人になりたい」
早坂さんは望む。いっそ綺麗な心であるかと言う様に。まるで純情であるかのように、不純を抜けたいと叫ぶ。
「私を選んでよ。そしたらもう、壊れるから」
対照的に、橘さんはどこか縋りつくように望む。対等な関係になりたいと婚約を破棄して見せた柳先輩の言葉に心揺らされながらも、彼だけのものにしてほしいと望み、まるでおぶさるように彼の懐に潜り込んでくる。
そう、もはや不純は止まれない。少しでも切っ掛けがあれば決壊するところまで来ていた。そしてそれは、桐島と橘さんの「最後の旅行」で訪れる。感情で生き物だから、何処まで行っても最後には止められなくなる。決定的な一歩を踏み出し、一線はいっそあっけなく、踏み越えられてしまう。
「ちゃんと約束守ってよ」
それは早坂さんへの裏切りに他ならぬ。そして彼女により約束のペナルティは突き付けられる。
果たして、この不純と背徳は何処へ行ってしまうのか。
怖いけれど期待しかない、のかもしれない。
わたし、二番目の彼女でいいから。3 (電撃文庫) | 西 条陽, Re岳 |本 | 通販 | Amazon