読書感想:天使は炭酸しか飲まない

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 さて、突然ではあるが、炭酸飲料と言う者は人によって好き嫌いが別れるかもしれないが、画面の前の読者の皆様はこれは外せないと言う炭酸飲料の推しはあられるであろうか。因みに私は、三ツ矢サイダーの通常の味が好きである。余計な味が付いていない方が好きなので。

 

 

滋賀県に存在する、久世山高校。この高校には、「天使」のいるという噂があった。恋に悩んでいる人の元に、ある日突然手紙を届け。その不思議な力の言う事に従えば、恋が上手くいくという噂。

 

 嘘か真か、それは真。天使の正体、それは伊緒という普通の男子高校生。彼には「顔に触れた相手の、想い人がわかる」という不思議な異能力があった。そんな異能力を用いいつも通り、相談に乗る日々を過ごす矢先。彼に衝撃的な出会いが訪れる。

 

相談相手の想い人として偶然を装い触れた、学内でも有数の美少女、湊(表紙)。彼女の心の中には多くの男性がいた。それこそ異常なほどに。

 

「やっと見つけたわ、久世高の天使」

 

更には彼の事を監視し疑っていたという湊から接触を受け、彼女の秘密であり悩み、上な惚れ癖を何とかしてほしいと言う相談を受け。自身の秘密を人質に取られ、専門外ながらも相談に乗ることになる伊緒。

 

 そもそも何が条件なのか、一体どこに問題の根底があるのか。条件を探り、確かめるために湊と共に過ごす時間が増えていく。学校と言う日常だけではなく、更に彼女と過ごす時間が増えていく。そんな中、伊緒は湊の親友、詩帆に試され、更には気の合う友人未満の存在、亜貴から問題解決の為のヒントを獲得し。しかしそれが、湊とのすれ違いを招く結果を導いてしまう。

 

必要になるのは、本音で向き合う事。今まで隠していた秘密を全部晒す事。

 

詩帆の後押しを受け、湊と向き合い。伊緒は話す、自分の後悔と天使となった切っ掛けを。

 

湊は話す。何故自分がこんなにも惚れっぽいのかと言う事の根底を。今まで誰かからの愛に飢えていた、抱えていた重い過去を。

 

「ゆっくりじゃ、ダメか?」

 

「俺は、お前の味方だ。だから、のんびり頑張れよ」

 

急ぐのではなくのんびりと。いつかきっと、何とかなると未来に希望を信じ、焦らずに。味方であると、共に歩いていくと告げる伊緒。

 

そんな彼の目の前、湊を女子の嫉妬による醜い噂が襲い、その心が傷つけられる。

 

「人の過去と、恋心に、汚い手で触れんじゃねぇぇぇえっっっ!!!!!!」

 

 そんな事を許すわけにはいかぬ。だからこそ、己を顧みず。校内放送をジャックし、己の正体が露呈する事も厭わず、伊緒は「天使」として、そして己自身として。怒りに燃える言葉を叩きつけていく。

 

まるで鏡写しのように、一番近くて一番遠い。けれど似ていないようで、実は似ている。そんな二人の繊細な心理描写が丁寧に描かれ、積み上げられる中、胸が痛くなる程の一抹の切なさもある恋心に溢れているこの作品。

 

正にここにしかない作品であり、正しく丸深まろやか先生の個性が爆発しており。だからこそ、前作にも増して更に面白い。既に面白さの最前線へと躍り出ているのである。

 

ここにしかないラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。