読書感想:オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

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 さて、突然ではあるが何故、ラブコメにおいては同棲生活と言う描写がなかなか無いのであろうか。それは恐らく、ラブコメは基本的には恋人生活を描くものであり、同棲生活を描くものではなく。価値観の違う二人の生活のすり合わせ、というのは中々に紙面の幅を取るからなのかもしれない。と、言う話はさておき画面の前の読者の皆様は結婚するのならどんな相手が良いであろうか。

 

 

その答えは各自の正解に任すとして、「オタクに恋は難しい」という作品をご存じであろうか。あの作品において恋が成立しているのは、主人公とヒロインが元々幼馴染同士、というのもプラスに働いているであろう。

 

 ではもともと繋がりのないオタク同士が結婚したのならどうなるのか、という結果を綴ったのがこの作品なのである。

 

普段は文具デザイナー、しかし裏の顔は人気同人作家の女性、咲月(表紙左)。毎年、帰省の度に親に結婚をせっつかれるという現状に辟易を覚え、溜息をこぼす毎日。

 

「じゃあ、俺と結婚しませんか?」

 

 そんな中、即売会の熱気の後で零れた偽装結婚でもいいというつぶやきに反応する影が一つ。同じ職場の敏腕営業マン、隆太(表紙右)である。

 

寡黙でクールな敏腕営業マン、しかし彼にも裏の顔がある。それは少しマイナーな地下アイドルの熱狂的なファンであり、ボカロPでもあるという咲月とは別ベクトルのオタクだったのである。

 

いきなりの結婚の申し込みにまずは同棲から始める事になり、咲月がとある事情により一人暮らしする二世帯用住宅で始まる二人の同棲生活。

 

 まるで方向性の違う二人の生活はどうなってしまうのか。と、画面の前の読者の皆様は思われるかもしれない。しかしご安心してほしい。何とこの二人、ぴったりと噛み合う者同士だったのである。

 

お互いに一人暮らし歴も長いから家事も苦にならず。お互いのスペースを尊重し、無理にペースを合わせる事もなく。

 

そんな中、隆太の趣味に関わるちょっとした謎を解くカギが咲月の趣味であったり。咲月の趣味に関わる買い出しに隆太が付き合ったり、原稿で修羅場な彼女を隆太の料理が支えたり。

 

「飲みましょうか!」

 

 お互いに何かいいなと思っていた思いがどんどんと特別に、当たり前になっていく。二人で食卓を囲む事が自然になっていく、書類の上で名前が変わるのがどこか嬉しくなっていく。まるでぴったりと嵌って埋め合うように、転がるように。結婚から始まる、ちょっと大人な、けれど大人の青春だからこその何処か現実的な瑞々しさがあるのがこの作品である。

 

ちょっと大人なラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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