読書感想:友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。

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 さて、男女の友情は成立する? と聞くと同じレーベルでもある某作品に繋がっていくわけであるが、画面の前の読者の皆様は男女の友情と言うものは果たして本当に成立すると思われるであろうか。男女の友情がもし本当に築けるのならば、きっと絡んではいけぬものがある。それは「恋」。恋と言う劇薬は、簡単に人間関係を壊すものである。それがもし、仲良し男女グループであればなおさらの事と言えるかもしれない。

 

 

大人になれば、なおさらに恋と言うものは劇薬と言えるかもしれぬ。ならば、大人になんてなりたくない、と言われるかもしれない。しかし、そんなに現実は甘くはない。ネバーランドなんて存在しないし、年を重ねるごとに様々な経験を積み重ね、否応なく大人にされてしまうのである。

 

 だが、それでも子供でいたいと叫ぶ者達がいる。それこそがこの作品の主役である子供達であり、それぞれに欠落と歪みを抱えながらも大人になっていこうとする者達である。

 

3-2=1、3-2+1=2。中学校時代の仲良しグループの色恋沙汰による崩壊で孤独を経験し、トラウマから友情を望む少年、純也。彼は今、青春の真っ只中を友情に溺れ過ごしていた。中学時代からの友人である新太郎と青嵐、高校からの新たな友人である夜瑠(表紙)と火乃子という仲良し5人グループで何気ないけれど大切な日常を過ごしていた。

 

 だが、その日常はふとした切っ掛けから、軋む音を漂わせ始める。ひょんな事から夜瑠が隠していた本性と青嵐への恋心を知ってしまい、彼女との間に秘密の共有がされてしまうのである。

 

お互いに知り合った秘密を盾に、純也を振り回す夜瑠。どこか後ろめたさを孕み始める日常が始まる中、純也は夜瑠の男性遍歴、彼女が隠していた秘密に触れ。けれどそれでも、「友情」に従い彼女を受け止める事を選び。彼女を肯定し受け止める言葉をかける、かけていく、かけてしまう。

 

 それは「友情」という側面からすれば最高の選択肢であったのかもしれない。けれど、それは諸刃の剣である。夜瑠の心中、狂おしい程に「恋」を知りたいと言う乾いた心がその言葉を受け止める時、そこに生まれ往く感情が確かに存在する。

 

自分を受け止めてくれた、男の魔の手から助けてくれた。初恋の相手だった筈の相手にも感じた事のない強烈な感情。まるで全身を蹂躙するかのような多幸感の中、目を覚ます嫉妬と言う名の怪物。

 

「みんなには内緒で付き合おうよ。秘密で、こっそりと。ね?」

 

 それこそは正に「恋」。視野が狭いなんて言わせないとばかりに、彼へと一方的に押し付けられた恋心。渇きを癒されてしまった心が解き放つ、彼の事をこれでもかと求める狂おしいまでの恋心。

 

それでも、両方を選ぼうと悪魔的に手を伸ばす。子供だからこその強欲な選択肢を提示する。

 

正に背徳にして背信。怖くなり身を引いてしまう程に。けれどこの恋は、狂おしくとも純粋に過ぎる。だからこそ、とんでもないと言う他にない。

 

背徳と焦がされるような甘さに溺れてみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

友達の後ろで君とこっそり手を繋ぐ。誰にも言えない恋をする。 (電撃文庫) | 真代屋 秀晃, みすみ |本 | 通販 | Amazon