読書感想:問一、永遠の愛を証明せよ。 ヒロイン補正はないものとする。

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 さて、果たして「永遠の愛」などというものは本当にあるのであろうか。画面の前の読者の皆様はどう思われるだろうか。私はそんなものがあれば素敵だと思う。が、もしそんなものがあるなら浮気も離婚もこの世界に存在しないとは思うが、ぐらいの認識である。

 

と、いう前置きは脇に置いておいて、画面の前の読者の皆様はMF文庫Jにおけるゲームもの、と言えばどんな作品を思い浮かべられるであろうか。「ノーゲーム・ノーライフ」シリーズであろうか、「ライアー・ライアー」シリーズであろうか、「神は遊戯に飢えている」シリーズであろうか。

 

 有名どころと言えば、上記三作品であろうか。そしてこの作品も、上記三作品と同じくゲームが絡む。だが、上記三作品とは違いこの作品は「ゲーム」ではなく「ラブコメ」に、焦点が当てられている。故に、この作品は面白い、という事を先に申しておきたい。

 

そこら中によくある別れ話を経て、恋人であった美凪と別れた少年、傑。永遠の愛、ではなくその過程を重要視する、とある過去を抱えているからこその主義を持つ彼。

 

 そんな彼はある日、部室棟奥の開かずの倉庫で呼び出された天使、クピドと名乗る存在にとあるゲームに誘われる。その名は「コクハクカルテット」。三週間という期限の中、参加者それぞれに一つずつ与えられるスキルと切り札を用いる、恋心を賭けたゲーム。

 

勝者に与えられるのは「永遠の愛」、敗者に与えられるのは「関係性の消失」。辻褄合わせされた結果だけを押し付けられる、一度参加すれば降りられぬゲーム。

 

 普通の傑であれば断っていただろう。しかし、彼は参加を決意する。その理由は、ずっと何度も告白してくれていた後輩であり、美凪の妹、今の両片思いの相手である凪沙(表紙)がこのゲームに参加してしまったと聞いたからである。

 

失いたくない、彼女との関係を。だからこそ、このゲームに参加し唯一無二の方法を目指す。

 

 だがしかし、事態はそう簡単ではない。残る二人の参加者である、学校一の美人の悠乃と、遊び人の愛華もまた、それぞれの恋を叶える為に、全力を尽くす。そして、凪沙もまた。傑とは違い、「永遠の愛」を望むからこそ、傑と落とす為に全力を尽くす。

 

そう、「恋心」である。「永遠の愛」、である。誰にだってある、誰もが持っている。大切な感情、その感情を賭けて、時に協力し合ったり、時に出し抜き裏切ったりしながらぶつかり合う。ただゲームをするのではなく、ラブコメの元にゲームをするからこそ。彼等の痛切なる想いが、まるで心を切り裂くかのように。襲い掛かってくるのである。

 

両片思いの凪沙とは平行線のまま、愛華や悠乃に振り回されながら。自分だけの答えを探していく傑。

 

「当たり前、です。忘れてくれと言われたって、忘れてあげないですから」

 

その果てに見つけた唯一の答え。ルールに反するとしても、明日の「彼女」に届けたいと願った想い。その想いは、因果をも越え一つの、取るに足らぬけれど特別な奇跡を生み出す。

 

だが、これで終わりではない。新たなゲームの時は、すぐそばまで迫っているのだ。

 

異能バトル×ゲーム×ラブコメ。ゲームを舞台装置とし、ラブコメを繰り広げる唯一無二。

 

だからこそ、この作品はこの段階で面白い。上記三作品にも負けぬ、それほどの面白さの可能性を感じる。

 

故に、私はこう言いたいし太鼓判を押したい。この作品、正に善いし悦い。未だ熟せず粗削りながらも、極上の予感を感じさせてくれる作品であると。

 

何処にもないラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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