読書感想:負けヒロインが多すぎる!2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:負けヒロインが多すぎる! - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品を読まれたという読者様は、この作品の趣旨は理解しておいでであろう。「負けヒロイン」、その恋は決して叶わない、届かない。しかし、長年の温めていた恋心を諦める事は、決して簡単には出来はしないのである。無論、あっさりと消化して前を向くヒロインもいるかもしれない。しかし、全てのヒロインがそうであるとは限らない。

 

 

それは今巻の主役である元気少女、檸檬に関しても同じことがいえる。彼女の恋は既に終わってしまっている。幼馴染であった光希はもう彼女を見てくれる事は無く。しかし、終わった筈の恋を忘れる事は簡単ではなく。いつまでも消えてくれぬ恋心の残滓が胸を焦がすのだ。

 

夏休みも終わりに近づき、文芸部として学園祭での発表を見据え始める中。

 

「温水君、私だって匂わせたいの」

 

前巻の騒動を経て奇妙な縁、何処か気安い名もなき関係となった杏菜に呼び出され管を巻かれる中。ひょんな事から二人は、檸檬と光希が二人で街を歩いているのを目撃し、更には光希の今の恋人である千早とニアミスすると言う事態に遭遇してしまう。

 

光希に事情を聴き誤解は晴れるも今度は、何故千早と和彦が一緒にいたのかという事実を聞かれ、咄嗟の誤魔化しが更なる誤解を招き。夏休みも終わり往く中、ただライトノベルを読んでいたいだけの和彦は新たな「負けヒロイン」のイベントに巻き込まれていく。

 

 夏の終わりに皆で、最後の時を過ごすかのように皆で騒ぎを繰り広げ。そんな中、和彦は檸檬の心の中、終わりかけた恋心が燻る本心へと迫っていく。

 

応援したいと思っていた、けれど素直に応援できない。もう手は届かないと思っていた、けれど今、光希は恋愛相談という名目で自分の側にいてくれる。その状況に、どうしても今なら略奪できるのでは、という悪魔の囁きが木霊する。

 

「そうだなぁ。その子に比べたら焼塩は断然いい子だよ、ってのはどうだろう」

 

その心を支えるのは、恋を未だ知らぬからこそ傍観者に立てる和彦で。意図せず二人きりの状況で、檸檬の内心の吐露を聞き。和彦は自分の知る「彼女」の話をして、自分なりにぼんやりと檸檬の心の背を押す。

 

「だってさ、こんなに幸せなことがある? 好きな人が、自分のことを好きだって。それだけであたしは充分幸せだよ」

 

 そして、改めて光希と向き合う思い出の場所。光希の本当の心を聞き、檸檬は何処か安心するように、柔らかく笑う。気が付かなっただけで、確かに光希の心の中には自分の居場所があったのだと。

 

だが、今はそこに千早がいる。そしてもう、まるでぴったりと噛み合うかのように、絆で結びついている。

 

それをきちんと気付けたからこそ、檸檬の心の中。終われなかった恋の火は、確かに、だけど綺麗に消える事が出来たのである。

 

前巻にも増して「負けヒロイン」の美しさが描かれ、ヒューマンドラマの様相も呈していく今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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