読書感想:オーク英雄物語3 忖度列伝

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前巻感想はこちら↓

読書感想:オーク英雄物語2 忖度列伝 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の刊行から随分と間が空いてしまった訳であるが、画面の前の読者の皆様の中にはまさか打ち切りか、と疑われた読者様もおられるのではないだろうか。その心配はこの感想を今、読んでいる時点で解消されている筈なのでご安心いただきたい。ただ、作者様であられる理不尽な孫の手先生が別口のお仕事で多忙を極められていたからである。では今巻は、一体どんな展開が待っているのだろうか。

 

 

自分は只、嫁を求めているだけなのに、結果的に忖度され目的からどんどん遠ざかるばかり。結果的に世直しを行く先々でしている我等が英雄、そして童貞のバッシュ。今巻で彼は一体、どんな世直しを結果的になしてしまうのだろうか。

 

 先に答えを言ってしまうのならば、それは奴隷解放という世直し。しかし、それだけではない。小さいけれど確かに一つ、少女の世界と言う名の「世」を直しているのである。

 

嫁を求め訪れたのはドワーフの国。バッシュにとっては迷子になった覚えのある苦い経験もある、鉱山の中に作られたまるで迷路が如き街。

 

「あたしの闘士になってくれ!」

 

ついて早々、バッシュにまるでプロポーズが如き声をかけてきた少女、プリメラ(表紙中央)。人間とのハーフであるが故に忌まれ、周囲から忌避され。近々開催される武の祭り、「武神具祭」においても相方となる闘士が得られなかった少女。

 

プロポーズでないなら意味はなく、別に祭りにも興味はなく。しかしかの祭りで優勝すればあらゆる望みが叶うと知り、バッシュは意を翻し参戦を決意する。

 

 参戦したバッシュ、オークにとっての英雄の前に敵は無し。プリメラが打ってくれる武器を次々と曲げて壊しながら、彼は圧倒的な強さで試合を勝ち上がっていく。その様を見、彼の剣と向き合う中。実力を過信し自信に溺れていたプリメラの心に変化が訪れ、目を覚ましていく。

 

バッシュの名剣、そこに込められた鉄の声。今までにバッシュが壊してきた剣、そこに秘められていた彼の思い。壊し方が教える、彼の本当の剣の腕。

 

「あたし、未熟なんだ」

 

現実を否応なく突き付けられ、彼のせいにしていた自分自身の未熟を悟り。プリメラは一歩、踏み出していく。

 

「ドンゾイ、お前にもオークの誇りがあるなら、望むものは戦って奪え」

 

 そして、バッシュもまた一つの戦いへと挑む。敵となる者の名、それはドンゾイ(表紙左奥)。かつての戦友であり、今は闘技場で飼いならされる奴隷オーク。生温い戦いの日々の中、心をすり減らして弱らせ誇りを忘れてしまった同胞。

 

そんな彼とも、バッシュは真っ直ぐに向き合い。その言葉が、その威容が。ドンゾイの心に火を灯し、忘れかけていた「誇り」をその心に蘇らせる。

 

そして英雄と戦友は、本気の咆哮を響かせ合い。対等の好敵手として、誇り高き「決闘」へと挑んでいくのである。

 

更なる世直しと、「誇り」というものの熱さが迸る今巻。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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