読書感想:こじらせお姉さんと僕だけのラブコメ

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は何かこじらせているものはあったりされるだろうか。何処かこれだけは譲れない、譲りたくないというものはあられるであろうか。

 

自分の平凡さを中学生の時に早くも自覚し、親に言われるがままに大学に進学した後、バイトの面白さに目覚めて大学を中退、親に見放された後はアルバイトで生計を立てるフリーター。

 

そんな、一定数はいるかもしれないけれど中々見ないかもしれない経歴を持つ青年、裕介。彼は今、唐突に人生の岐路に立たされていた。

 

その岐路となる選択肢を齎したのは一体誰か?

 

「端的に言うと、もう裕介くんは働かなくてもいいよ?」

 

「私と同棲してくれるのなら、君のことは扶養してあげる」

 

「それでもちろん、将来的には私と結婚することも考えてもらえると嬉しい・・・・・・」

 

 それを齎した女性の名は、美織(表紙)。裕介より七つ年上、現役人気イラストレーターの顔を持つお姉さんである。

 

 元々はSNSでの繋がりから始まり、一月に一回か二回会う程度、その程度の関係だったお姉さんから急に提案された、正に人生の選択肢。その選択肢の先をお試し体験する為、裕介は美織の住む高級マンションでお試し同棲をする事となる。

 

 降ってわいた同棲生活、裕介へと美織は時に大胆に、まるで積極的な少女のように、肌を晒す事も厭わず迫り来る。

 

何故そうも積極的なのか。何故、そんなにも裕介を逃がさんとばかりに絡めとろうとするのか。

 

「もっと言うと、年下の男の子と同棲したい」

 

 その心の奥底にあったのは、拗らせに拗らせまくった恋心。今まで全てをイラストという自分が夢中になれるものに捧げてきてしまったからこその、まだ男を知らぬもそろそろ行き遅れと呼ばれかねぬ女の心の叫び。

 

まるで只一人を誘い込まんとする誘蛾灯のように。優しく包んで離さないとでも言わんばかりに張り巡らす蜘蛛の巣のように。

 

「これから美織さんの傍で、いつも一緒にいたい」

 

「好きだよ美織さん。本当に好きだ」

 

 だが、何処か拗らせていたのは裕介もまた同じだったのかもしれない。何処か空虚で孤独で。そんな心の一番大切な所を埋めてくれる彼女に出会えて、初めて自分自身の未来への目標を抱けたのだから。  

 

なればもう阻むものはあるか。否、もはや阻むものもなく。そして二人はまるで一つとなって転がり落ちていくかのように、何処か大人の淫靡な香りのする恋へと堕ちていく。

 

 はじめて同士、拗らせた者同士。そんなこの二人のラブコメは果たして「普通」のラブコメと言うのだろうか?

 

さて、いったい「普通」とは何だろう?

 

どうかこの作品を読んでみて、画面の前の読者の皆様も考えてみてほしい。だが確かに言える事が一つ。「普通」とは、きっとそれぞれの想いの形によって異なる筈というものである。

 

 

ちょっぴりぽんこつで重いヒロインが好きな読者様、大人みたいで子供みたいなラブコメが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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