読書感想:エンドブルー

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は百合もといガルコメの大家である作家の先生は誰だと思われるであろうか。恐らく一定数の人はかの、みかみてれん先生をイメージされる筈である。では、電撃文庫における百合の作品の先駆者は一体誰であると思われるだろうか。今放送されている、某アニメの印象も相まって恐らく多くの読者の皆様が、入間人間先生をイメージされるのではないだろうか。

 

そう、かの安達としまむらシリーズを手掛けられているのも入間先生であり、かの百合漫画で大人気を博したやが君こと、やがて君になる。のノベライズを手掛けられたのも入間先生である。

 

ではその入間先生が、やがて君になる。の作者であられる仲谷鳰先生と再び組まれて手掛けられた今作品は、一体どんな作品なのだろうか。

 

この作品は短編集である。入間先生の過去作である「クロクロクロック」と、「少女妄想中。」のその後を描いたお話を入れながらも、新規の読者の為にもハードルを低く設定し、読み易く口当たりも軽い作品達を集めた短編集なのである。

 

だが、そんな中、確かに込められているもの、輝いているものが存在する。それは何か。それは少女達の、そしてかつて少女だった者達の、緻密で繊細な心の動きが齎す光である。

 

謎の美女と陶芸家見習、どうして組み合わさるのかと聞きたくなるような意外な組み合わせだったり。

 

何かに諦観したような女性が、姪との付き合いの中でかつて共に過ごした、走り回る鳥のようであった「彼女」の事を思い出したり。

 

そこにあるのは諦観、後悔、切なる願い。そして胸が痛くなるほどの、確かに今も忘れられぬ愛。

 

ずっと言えなくていつも笑顔の裏で。隠してきた想いは告げられなくて。

 

その思いをずっと引きずっていて。忘れようにも忘れられなくて。

 

「大好きだったよ、大好きだった」

 

だけど今、夢と現の境でもう一度出会えた。やっと少しだけ、素直になれた。

 

「愛してるよ、ほんと」

 

再会と別離、その一つの過程が教えてくれた。本当に大切なものは掴み取りに行かなきゃいけない、貪欲にならないといけない。

 

その意味を見つけられたから、きっともう大丈夫。自分にとっての、アオの先。安寧の空は見つけられたのだから。

 

まるで透き通るかのように透明で。そしてどこまでも鮮烈で、繊細で。迸るかのように切なさと愛しさがこみ上げるかのように。

 

まさに入間先生の真骨頂、入間先生だからこその面白さが出ているこの短編集。

 

先生のファンだという読者様。綺麗で鮮烈な心理描写を楽しみたいと言う読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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