読書感想:異世界はジョーカーに微笑んだ。

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。犯罪とは露見しなければ犯罪ではないと嘗て誰かが言ったように、事実世の中には明らかになっていない犯罪が多く、そして様々な理由から裁かれぬ犯罪者がいるかもしれないという事もまた、一つの真実であるのかもしれない。ではそんな裁かれぬ奴等を殺して回る犯罪者がいるとしたら、貴方は何を思うだろうか。

 

日本に一人の殺人鬼がいた。彼の名前はジョーカー(表紙上)。彼は最悪の殺人鬼でありながらも、まぎれもなくサイコパスでありながらも「正義の殺人鬼」と呼ばれた只の殺人鬼ではない男である。

 

ではその異名の理由とは何か。それは彼の殺害対象が罪を犯しても裁かれぬ犯罪者、言うなれば「上級国民」を趣味のままに殺して回っていた殺人鬼だからである。

 

そんな彼は、死の間際。自らを追ってきていたSATの隊員、結奈(表紙右)と共に異世界へと召喚される。

 

 

だが、この世界にもまた裁かれぬ悪の権力者、やはり言うなれば「上級国民」がのさばっていた。その魔の手が彼等が逗留していた村まで伸びた時、再び彼は殺人鬼として世に踊り出る。

 

力なき弱者の慟哭が響く時。怨嗟に満ちた願いが叫ばれる時。

 

「了解した」

 

殺人鬼との契約が示され、異世界に殺人鬼が生まれ出る。

 

「さあ、楽しい楽しい趣味の時間のはじまりだ」

 

そう、これこそが異世界がジョーカーに微笑んだ瞬間であり、残酷で醜悪で、だけど純粋なヒーローが生まれた瞬間なのだ。

 

再び殺人鬼に戻ったジョーカー、彼のやり口はいっそ苛烈に残酷に。そして一切の容赦なし。

 

 

人の壊れるさまを見せつけ、心も体もへし折り、その遺体を冒涜し新たなオブジェと言わんばかりに街へ飾り立て。

 

エルフの王女、レフシ(表紙左)も巻き込み悪逆を尽くし。

 

全ての背景にいた第一王子の全てを奪い、晒し者にし最後はその命をあっけなく奪う。

 

そのやり口は決してスマートと言えるものではないかもしれない。殺人鬼の心のままに行われる残虐は、法に照らし合わせて言えば決して許されるものではないのも当たり前だ。だが・・・そこに独特の面白さの光を感じるのは私だけだろうか。

 

その通り、彼と我々読者の間には致命的なズレがある。彼を理解するのは難しいかもしれない。しかし、彼はそういう人間であるからこそ仕方ない。

 

この作品はまごう事無きハードでグロテスクなダークファンタジーである。そして危険な魅力に溢れる作品である事は間違いない。

 

普通の作品とは一線を画した作品が好きな読者様、ダークなファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

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