読書感想:鴉と令嬢 ~異能世界最強の問題児バディ~

 

 さて、異能と超能力は似て非なるものなのかとふと思った次第であるが実際の所どうなのだろうか。だが「超能力」と聞くより「異能」と聞く方が能力に幅が出るような気がするのは私だけであろうか。因みに今、とあるカードゲームで「PSI」と呼ばれるカテゴリを用いる「アイリス」というカードが活躍しているらしいがそれはともかく。ゴリッゴリの「異能バトル」と聞くと中々最近見ない気がするのは私だけだろうか。

 

 

私も見たことが無いと言う読者の皆様、安心してほしい。この作品はゴリッゴリの「異能バトル」系の作品であり、ド派手に熱いバトルが溢れていると先にお伝えしておきたい。

 

この作品の世界の一部の人間に備わる超常的な力、「異能」。いくつかのカテゴリに分かれ強力さを表す度合いにより区別されるその力は、心無い者が用いる事により異能犯罪を巻き起こしていた。

 

『―――0コールで出てくださいと日頃から言ってますよね』

 

「開口一番それか。てか今どこだよ」

 

 そのような犯罪者を取り締まる組織、通称「異特」。学生でありながらその一員として、夜闇に紛れ犯罪者を狩る少年、コードネームを「暁鴉」、本名を京介(表紙左)。最強クラスの力を持ち、大企業の令嬢である相棒、アリサ(表紙右)に日々振り回され。彼は時折溜息を吐きながらも、日々任務に励んでいた。

 

その日々の中、彼にとっては取るに足らぬ任務で捕らえた男が、裏組織と繋がりがあることが判明し。更には捜査線上に「禁忌の果実」と呼ばれる異能を強化する違法ドラッグが浮かんだことで、事件は新たな様相を見せ始めていた。

 

裏組織による京介達の通う異能学院の襲撃事件が発生し、大規模な陽動の裏で狙われたのは学院地下の地下情報室。そこを狙う残党の排除の為にアリサと共に向かう京介の前に現れたのは、京介の実の父親である賢一。天才的な頭脳を持ちながらも禁断の研究に手を染め、実子である京介と彼の妹である美桜すらも実験対象とした死刑囚。

 

 やるべきことは只一つ。例え始まりが空っぽでも、ここに詰め込んだものは嘘ではないと。決戦が迫る中、アリサと京介は己が心に抱えたものを伝え合う。

 

それは、互いに能力の暴走により人を殺したという過去があると言う事。容赦なく始まる決戦の中、敵の能力によりアリサは過去のトラウマを刺激され立ち止まってしまう。

 

「そのまま立ち止まっていたいのか、それとも―――先に進みたいのか。もしその気があるなら、立てよ。手なら貸してやるから」

 

「きっといつか、貴方の隣に追いつきます」

 

その停滞を晴らすのは京介の言葉。負けたくない、追いつきたいと願う相手の手荒な激励にアリサは再び立ち上がり。事件を終わらせる為、京介は美桜により封じられていた自分の全力を解き放つ。

 

真っ直ぐに熱い異能バトルの中、喧々諤々ながらも唯一無二の絆を持つケンカップル的なバディの活躍が光るこの作品。真っ直ぐに心が躍る、心が燃える。だからこそ面白い。

 

異能バトルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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