読書感想:名探偵は推理で殺す 依頼.1 大罪人バトルロイヤルに潜入せよ

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様にとって、バトルロイヤルと言えばどんな作品を上げられるであろうか。私としては今放送中の仮面ライダーギーツか、先駆者である仮面ライダー龍騎あたりを上げたい所であるが。ではバトルロイヤル、というものにおいて付き物となるのはなんであろうか。それ即ち「戦わなければ生き残れない」。臆病は許されない、という事である。

 

 

故にこの作品においても、臆病は許されぬ。戦うしかないのである。

 

幾多の事件を解決してきた天下の高校生名探偵、シン(表紙中央上)。しかし国際的犯罪コンサルタントを追い詰める道中の戦闘で致命傷を負い、悔いを残しつつもこの世を去る、筈であった。

 

だが、そうはならなかった。謎の部屋に呼び寄せられそこで出会った謎の黒ずくめの女性、カロン。「監獄界」と呼ばれる、様々な世界の大罪人が集められ、只一人に与えられる無罪放免を賭けて「闘争裁判」と呼ばれるバトルロイヤルで争う世界。かの世界の審判員である彼女は、参加者の中に一人だけ紛れた冤罪者を見つけ出してほしいと言う依頼を彼へと託す。

 

「名探偵の僕の前には、ひと欠片の謎も残しはしない」

 

 償いを果たす為、生き残りを賭け。広大な島状の「監獄界」へと転送されて早々、猟奇殺人鬼に追われる「千人殺しの魔女」ルーザ(表紙中央)に出会い、彼女に手を貸す事となる。

 

極悪非道な犯罪者だらけの中、シンに何ができるのか。彼はどう戦おうと言うのか。

 

「今、お前の罪を明らかにしてやる。謎解きの時間だ」

 

彼にしか出来ぬもの、それは「推理」。この世界でのみ顕現する、犯罪者達にとっての戦う力、「罪威」。だがそれを受け入れた時、それは主を襲う絶死の力となり。それを発動させるために、罪の矛盾を突き微かな違和感から、解き明かす。それが彼にしか許されぬ戦い方。

 

だがしかし、忘れてはならぬ。この世界は大罪人たちが争う世界、そして多くの者達が立ち止まらぬからこそ、この世界においては血が止めどなく流れ続ける。

 

戦いを避ける者達の村に避難したかと思えば、殺人事件の発生により村が瓦解し。戦いに積極的ではないルーザが特別な決闘に誘われ、その中で盗賊の王に目を付けられたかと思えば、盤外から飛び込んできた闇落ちした勇者が全てを覆していく。

 

正に二転三転、七転八倒。いついかなる時も予断を許さぬ世界を、弟子としたルーザと何故かついてきた詐欺師のクミエと共に駆ける中、ルーザを頂点とした世界を目指す事で舞台そのものの崩壊を狙っていく。

 

だが、この世界すらも名探偵に相応しいと言わんばかりに謎だらけである。垣間見える謎の文明の跡、そして一枚岩ではない事をうかがわせる運営陣。どこもかしこも謎という闇だらけ、まさに五里霧中。

 

そんな世界観そのものに魅力がある物語であるこの作品。手に汗握るバトルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

名探偵は推理で殺す 依頼.1 大罪人バトルロイヤルに潜入せよ (ファンタジア文庫) | 輝井 永澄, マシマ サキ |本 | 通販 | Amazon