
さて、時に画面の前の読者の皆様は一芸特化、という言葉をご存じであろうか、多分ご存じであろう。例えばバトルのあるラノベものにおいてはそういうキャラが主人公としては多い気がする。それは何故だろうか。器用貧乏ながら使える技を自分なりに組み合わせて戦うタイプの主人公がいてもいい気がするのだが。やはり一芸特化の方が、花になるしバトルにおいても熱さを出せるからであろうか。
という訳でこの作品はどんな作品なのか、というと。剣術に一芸特化した主人公、麒翔(表紙右)が龍皇の六人の妃の二番目の妃の娘であり、公主である黒陽(表紙左)に見染められ。共に理不尽を打ち崩すべく成り上がりの道を歩き始める物語なのである。
龍人種が世界最強の種族の一つ、と扱われている異世界の、龍人族が運営する中央龍皇学園。しかし麒翔は人間の父と龍人の母親の元に生まれたハーフであり、龍人からすれば当たり前に持っている筈の魔術適性などを持っておらず、入学早々「無能」の烙印を押され。だが剣術で最高の成績を取り、何とか進級を果たした。
「なるほど。少しは運命というものを信じてみたくなったぞ」
そんなある日、麒翔と級友である桜華たちのいる校舎へ一日限定でやってきた黒陽。ひょんな事から彼女と模擬試合をすることになった麒翔は引き分け、その実力を見た周囲は手のひらを返し。その日の夜、実は手加減していたのを見抜いていた黒陽と再び仕合う事に。
「弱者にかける情けこそ、力ある龍人の義務そのもの。王たる器・・・・・・」
「あの夜のように、黒陽と呼んでほしい」
その本気、絶対に斬れぬと言われる石を切り裂くほどの腕、そして垣間見せた、情け深さ。将来的な政略結婚が決まっており、恋をしたいと自分以上に強い男を探していた黒陽の心、麒翔という存在が焼き付いて。獣王の森と呼ばれる魔獣も出現する森での夏季研修にやってきて、麒翔たちの群れに入ってくることに。
「あなたは自分の価値を見誤っている」
「私はこの感覚を失いたくない」
研修の中、妃として自分を持ち上げてくる黒陽に振り回され。彼女の侍女である歌恋に睨まれたり。けれど中々、思いが交わらぬ。それは麒翔の中にある思いにつき。落ちこぼれ、無能であるからこそ自分などでは、という思い。桜華と二人きりでの入浴中、黒陽が明かすのは純粋な思い。今まで感情を殺し、恋を知らなかった彼女の中に芽生えていた思い。
そんな交わらぬ思いを抱える中、戦っていく事になるのは数々の魔獣、そして殺人鬼。まだまだ不甲斐ないけれど、それでも麒翔の中にも芽生えていく思い。黒陽を失いたくない、という気持ち。
「足りない部分は補いあえばいい」
「だが、今回は本気だ。もう放さない」
そう、足りぬというのならば補い合えばいい。それこそが群れ、仲間というもの。麒翔もやっと覚悟が決まって。もう離さぬ、と思いを告げるのである。
燻っていた少年が愛を受け、立ち上がっていくこの作品。徐々に結ばれていく心が好きな方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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