読書感想:シートン動物戦記

 

 さて、ファンタジーの世界観において獣人、という人種はよく見られるものであろう。時に亜人とも呼ばれるその人種、しかし獣人と一口に言っても、一口では言い切れぬかもしれない。例えば耳と尻尾があるくらいであとは人間にそっくり、という場合もあるかもしれないし。我々の知る動物をそのまま人間にしたような姿、をしている場合もあるかもしれない。様々な姿をしているであろうそういった人種はどう扱われるだろうか。よき隣人として扱われるかもしれないし、差別されているかもしれない。

 

 

ミーデシア王国に属する貴族の長男であるも、妾腹という生まれを持ち、愛してくれる継母と、可愛い妹と共に育てられた青年、シートン(表紙手前から二人目)。彼の初体験の相手は、娼館の獣人の娼婦であった。このミーデシア王国において、獣として扱われる獣人との愛は禁忌。だがシートンは妹に家督を譲る為、敢えて獣人好きという噂を立て軍の門を叩き。ミーデン共和国と山を挟んで向き合う、国境警備隊に配属されていた。

 

「中尉はご自身が獣望を集めていることを自覚すべきです」

 

獣人を好み、差別せぬ彼。そんな彼の事を部下の獣人達は、人間としては一番マシと慕い、伝説の人物「獣王」の次代と目している。イヌ科の獣人、麦姫(表紙手前)やトラ系獣人、虎次郎(表紙奥)、鹿系獣人、かの子(表紙手前から五人目)といった部下たちからの獣望を集める彼。 そんなある日、哨戒部隊が発見したのは火薬のにおいのする四千人の部隊。

 

「そのための時間稼ぎを、我々ができるか、ですね」

 

やにわに高まる戦争の気配。この街の非戦闘員を逃がしたい、という上層部の意向に従い、シートンは隣町まで船を手配する斥候を出し、己は部下たちを率い少しでも敵を足止めするために町を出てゲリラ戦へ。だが無能な人間の下士官が臆病風に吹かれ、勝手に撤退命令を出してしまった事でささやかな戦線は崩壊してしまい、部下たちともはぐれてしまい。

 

「種付けをしませんか!」

 

「しないよ!?」

 

先の見えぬ戦いの中、シートンを慕う麦姫に獣人的愛し方、価値観で迫られたりしつつ。何とか生き残っていた部下たちとは再会するも、駐留していた街は焼かれてしまい捕虜たちは殺されて。何とか近くの要衝までたどり着き迎撃準備を整える中、上層部はこっそりと逃げ出してしまい。シートンは残された者達を率い、戦う事に。

 

「でも手伝ってもらいますよ。生きるためなんですから」

 

全ては生き延びるために。懸命に部下たちを率い戦い抜き、「獣王」と呼ばれる素質を示して。段々と絶望に傾きつつある戦況の中、生き抜いていくのである。

 

骨太なファンタジー戦記といった感じのこの作品。芝村裕史先生らしい戦場を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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