読書感想:ラノベも俺も好きなギャル

 

 さて、今でこそオタクと言うのは社会的人権を得て、ラノベと言うのも割と普通に受け入れられ始めている訳であるが。昔語りをする訳ではないが、私の青春時代はまだまだラノベと言うのは身近ではなく、読んでいると奇異の目で見られたものである。そんな話題はさておき、やはり今の時代もラノベというのは、一部の人しか読まないものなのだろうか。

 

 

 

その答えは今の高校生、青春を送る読者様に求めるとして。例えばギャル、と呼ばれる人種はヒロインになる場合隠れオタクとして扱われる事はあるが、ラノベオタクというキャラ付けをされる事はない、と言ってもいいかもしれない。

 

しかし、この作品のヒロインであるギャル、澪奈(表紙)はラノベオタクなギャル、という中々珍しい人種である。ひょんな事から見た深夜枠アニメの原作からラノベ沼に入った、切っ掛けとしてはまぁまぁいるだろうタイプのオタクである。

 

「じゃあさ、あたしたち付き合おーよ」

 

そんな彼女はSNSで「みなちょ」という名前で活動しており。その彼女の正体を知らぬままに、SNS上で交流していたHN「ねずまよ」こと主人公のラノベオタク、涼介。オフ会で出会って、共に作家のサイン会に出向き。その後で唐突に告白され、この作品は始まる・・・・・・かと思えば、始まらない。 かつて二回のトラウマを経たからこそ彼は三次元の女性に恋をする事はないと豪語し。そんな彼を落とすべく、彼女は敢えてラブコメらしく、オタクの夢全開で彼を落とそうとしていく。

 

 

ある時はクラスでいきなり話しかけたり、というテンプレを。またある時は自転車を二ケツするという青春を。涼介の周りの者達も巻き込み青春を過ごす中、彼女は少しずつ、凍り付いていた彼の心を溶かしていく。

 

 

そう、言うなればこの作品は「理解」と「受容」のお話であるのかもしれない。相手の事を理解し、受容し。お互いの特別をすり合わせていく中で始まっていく、特別に怯え足がすくむ。今までの自分があるからこそ、特別というのが怖くなる。

 

「もう、気持ちは固まったよ」

 

だけど、それでも。自信が持てなくても、友達として隣に在れるように。気持ちは固まり、臆病だけれど一歩歩き出して。 まるでラノベのような、二人の青春が本格的に始動していくのである。

 

ラノベという要素で繋がる、心踊る温かさのあるこの作品。徳の高い、かもしれぬぐいぐいくるギャルに心萌えてみたい読者様は是非に。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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