
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は例えばラノベやアニメにおいて、関西弁を使うキャラはどういった印象をお持ちであろうか。飄々としている、実力を簡単には見せない、といった印象があるかもしれない。更には糸目キャラはどう思われるであろうか。目が完全に開いた時、本気で戦ってくる、という印象があるかもしれない。この作品ではそんな、糸目の関西弁キャラ、イナリ(表紙中央)が主人公であるのだ。
「負けたないなぁ・・・・・・」
サイオンジ辺境伯爵家の嫡男であり、王都にあるウェルドナ王立魔法学院に通うイナリ。ある日、授業中に才能を見せなかった級友を嘲笑しようとしていた所で思い出す。この世界、前世でやりこんだRPG「コールオブマジックナイト」の世界やん、と。この世界においてイナリは悪役貴族。本来の主人公である勇者、リオスと幾度となくやり合い二回を除いて勝ち、最後は魔王軍の尖兵となり魔物になって殺される、といういわばヘイト役。死ぬのは別に怖くないけれど死ぬなら自分の美学に沿って。プライド高めな彼は、まず考える。今は物語開始二年前。ならまだ鍛えれば、間に合うのでは?と。
「ごめんなぁ、ミヤビ。今まであんまり優しゅうできんで」
己の力は、己だけのスキル、様々な属性や効果を持てる魔剣を創り出すスキル。リオスのヒロインの一人となる義妹、ミヤビを一先ず甘やかすことに決めて。彼が選んだのは強くなる事。その為には学院のような環境では足りぬ。一旦休学、彼は実家の領地、ほぼ魔境に接している地方へ戻り。一冒険者として、先輩冒険者であるマクリーアをお供にレベリングを始めていく。
そこで訪れるのは、本来はあり得ぬ筈の出会い。上級魔族に襲われた街から逃げて来た聖女、ローズ(表紙右上)。運悪く、ついてきたミヤビが魔族由来の特殊な病気にかかってしまい。妹を助ける為にも、ローズの闘いに手を貸し、魔族の討伐を目指す事へ。
「皆で力を合わせれば間違いなくやれるはずや」
仲間としてマクリーアを呼び寄せて、三人で挑むのは上級魔族討伐。相手はとある条件を満たす事で残機性を持つ、いわば不死身性のある相手。だけど、怖くはない。寧ろ笑みを浮かべ挑んでいく、ローズと言う頼れる相方と共に。
「精進せんと、君のことどんどん置いてってまうで」
そして物語開始時へと時間は進み。イナリの行動が知らぬ間に未知の歴史を刻み始める中。リオスと一度目の遭遇をした彼は、本編よりも数段上の力であっさりと、負かして見せるのである。
関西弁な主人公が、不器用な真っ直ぐさと熱さを見せながら突き進むこの作品。ちょっと変わったように見えて真っ直ぐな主人公を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。