
さてさて、画面の前の読者の皆様は、例えばゲームにおいて「RTA」という遊び方をしたことはあるであろうか。RTA、つまりリアルタイムアタック、要は目標のクリアまでのタイムを一秒でも縮める遊び方である。その道筋と言うのは、例えば戦いを避けたり、高所から飛び降りたりしてショートカットするなど、普通では考えられぬ道を辿ることが多いかもしれない。この作品はそんな、RTAをダンジョン配信で行う物語であり。正にRTAが如くさくさくと読める作品なのだ。
現実世界に初級、中級、上級、例外としてユニークといった括りのあるダンジョンが存在し、冒険者やダンジョン配信が当たり前に存在する世界。かの世界で、初級ダンジョンを舞台にRTAの最速を目指す事を生きがいとする、いわばRTAバカな少年、ケンジ(表紙右)。
「絶対に大バズりするから」
その記録は、わずか二十九秒。だがRTA勢と言うのは数少なく、参考記録も一時間弱、というもの。RTA勢を増やしたいと思うケンジは、幼なじみでありS級冒険者、更には登録者百万人オーバーの配信者でもあるシオリ(表紙左)に勧められ、ダンジョン配信に手を出すことに。
「じゃあ今度やりますね」
さて、こう言った作品をご存じである読者様であればこの後の展開は何となく予想がお付きではないだろうか。そう、天変地異レベルの驚天動地である。一回目の配信は動きが早すぎて嘘だと疑われ。二回目の配信は生配信にしたことでやにわに注目を集め。その中でケンジが披露していくのは、時間魔法と言った未知の魔法体形やショートカット、サーチと言った、誰にも知られていない技術。彼は知らなかっただけで、彼の持つ技術、魔法は一般人からすれば正に未知の、垂涎の的であったのだ。
「でもタイムは金より重いので」
そういった技術を惜しげもなく公開し、世に広めながら。シオリをお供に挑んでいくのは、ダンジョンのRTA生配信。勿論そこでも規格外の、常識外の事を様々にやらかしていく。エリクサーの原料をスタミナ補給のためにそのまま食べ、モンスターを素手でぶっ飛ばし、時にはただの石を投げてフロア中を跳弾させてモンスターを全滅させたり。ショートカットのため、だけに神の試練がある隠しフロアに突入し、フロアボスをごくわずかな隙をついて一撃で叩きのめして。
「この指輪を、受け取ってくれないか?」
その後、ドロップした神話級のアイテムを、ふと思い立って、RTAの為に、守る為にシオリにポンと上げて、リスナーの阿鼻叫喚を招いたり。色々なドタバタや笑いを巻き起こしたりしつつ、気が付かない所で世界に波乱を巻き起こしながら突き進んでいくのである。
正にRTAが如くさらっと読めるこの作品。いい意味で軽い面白さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
Amazon.co.jp: 初級ダンジョンRTA走者 世界最速を達成したので解説動画を公開したら参考にならなすぎで大バズりしてしまう : ねこ鍋, 喜ノ崎 ユオ: 本