読書感想:S級冒険者が歩む道 ~パーティーを追放された少年は真の能力『武器マスター』に覚醒し、やがて世界最強へ至る~

 

 さて、昨今追放ものは異世界モノの主流の一つと化している訳であるが、追放ものの王道の展開と言えば、追放された主人公側は成り上がり、追放した悪役側は落ちぶれる、という展開が多いであろう。無論、ある程度時間を置いて主人公側と悪役側が仲直りする、という展開もないわけではないが。だがしかし、別に追放された側と追放した側が頻繁に顔を合わせる、という事もない事はないだろう。 追放が理不尽なものではなく、ある程度の理由があれば。お互い見つめ直す事も出来るであろう。

 

 

と、言う前置きから察していただけたかと思うが、この作品はそんなお話である。追放された側と追放した側、それぞれの視点が交じり合って繰り広げられるお話なのだ。

 

魔物や魔族、冒険者と言った要素が存在するとある異世界。かの異世界で生まれた幼馴染同士の二人、ハイセ(表紙左)とサーシャ(表紙右)。しかし洗礼、と呼ばれる子供達が全員受ける儀式を得、「ソードマスター」という能力に目覚めたサーシャとは違い、ハイセに目覚めたのは「武器マスター」という謎の能力。その能力の詳細が分からずとも、サーシャと一緒にパーティを組み。しかし仲間が増え、パーティが大きくなると共にハイセの実力不足は顕著となり。話し合いの果て、ハイセは追放されてしまう。

 

「お前のことを、もう一度信じようと思ったのに!!」

 

 サーシャの思惑的には、ハイセは間を置かず故郷に帰る筈だった。が、しかし。ここで間の悪すぎるアクシデントが発生する。サーシャに勧められた薬草回収の依頼に行ってみたら、そこにいたのは強大なる黒竜。 サーシャは全く知らなかった間の悪さ、やむを得ぬ死闘の中で目覚めたのは「武器マスター」の、現実世界の銃器を呼び出すという真の力。引き換えに大けがを負い、サーシャへの信頼を失い。数年後、二人はそれぞれS級冒険者となっていたのだ。

 

ハイセは「闇の化身」という異名を持ち、異例のソロで。サーシャは「銀の戦乙女」という異名で、仲間達と共に。全く対照的な二人は、交わる事もなくそれぞれの道を行く。

 

エルフの国へ薬草採取へ出向いたハイセは、プレセアというエルフに同道され。やむを得ず共に行動し、結局引き離せず。 時々二人でいる事も増える中、ソロで己の道を行く。

 

サーシャは王女の護衛をし、仲間と共に。王道の冒険者の道を行く。

 

「進むべき道は違えど、ゴールは同じだと私は思う」

 

もう元の関係には戻れない、戻るつもりもない。だけど新たな関係になることは出来る。冒険を進める中、お互いにあの日の事を見つめ直して。それぞれの生き方を祝って、決意を新たに進んでいく。

 

王道と異端、交わらぬけれど交わる時もある。サーシャが遭遇した魔族が王都を襲撃しスタンピードが起こり。その中、二人はそれぞれの場所で戦いへ挑む。

 

 

「私は、過去のお前を連れていく。お前には・・・・・・過去の私を預けておくぞ」

 

交わらずともいつかは交わる、そう信じ。お互いに過去の自分、夢を預けて。またそれぞれ、二人で歩き出していくのだ、それぞれの道を。

 

 

一味違った面白さがあるからこそ、爽快感もまた違うこの作品。ちょっと目新しい面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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