さて、時に歴史の教科書においては「天下の大悪人」と呼ばれる人物が登場したりする訳であるが。大悪人、というのはその悪事しか後世に記録として残っていないようなものであり、その人物が本当はどんな人物だったのか、とったりするのかは教科書には、浅く習う程度の歴史には書いていない事もある。では本当はどういう人物であったのだろうか。それを知ると、見方が違ってくる事もあるかもしれない。
と、何か哲学的にも聞こえるかもしれぬ始まりからは特に関係はないのだが。最近ラノベの流行の一つに悪役転生もの、というのがあり。将来的に破滅する悪役に転生してしまいその運命を覆すために努力するというのが大体の骨子であるのだが。この作品も例に漏れず、そんな作品なのである。
とある大陸の北にある藍河国。父親であり将軍でもある英深と母親である玉詩、兄である海亮を家族に持つ天芳。ある日父親が連れてきたのは親友の娘であり、襲撃により家族を亡くした少女、星怜(表紙)。彼女の姿を一目見た時、し始めた頭痛。その先に思い出した事実がある。
それはこの世界は中華風の世界が舞台のシミュレーションRPG、「剣主大乱史伝」の世界であり。将来的に星怜は後宮に入り傾国の美女となり、自身は奸臣、天下の大悪人となって三パターンあるエンディングのどれでも無残に死ぬという事。
「・・・・・・星怜を大切にすればいいな」
さて思い出したからには死ぬわけにはいかぬ。しかし一つ問題が。それは人々が基本的に持っている力、「内力」が天芳は絶対に殺せるようにとそもそも持たされていないと言う事。このままでは生きるために戦う事も出来ぬ。まずやるべきは星怜を大切に、悪の道に進ませぬ事。内力をアップさせる武術書を見つけ、逃走用の武術は身に付けると言う事。 街で見つけた怪しい書物で独学で学び、その中で星怜へ贈り物をし、彼女の心をほどき始め。
「いなくならないでください。決して、死なないでください!」
その中で兄、海亮の心も揺り動かして。家が確実に賑やかになっていく中で起きたのは星怜の誘拐事件。その犯人を追う為に王弟に力を借り、下手人は止めるもその場にいた裏世界の実力者たちにより窮地に陥り。そこへ救援に来てくれたのは、王弟の剣客、雷光師匠とその弟子である化央。 父親の計らいにより雷光師匠に弟子入りする事に。 化央には睨まれてしまうも、兄弟子として真っ直ぐに慕い、師匠からの試験でその秘密を知る事にもなり。 正しく二人一組の相棒同士のように成長し、師匠からの仕事を引き受けることに。
だが、仕事で出かけた先でとんでもない敵が待っていた。王太子である狼炎と、傍に仕えていた海亮を襲うのは、星怜の家族の仇である飛刀使い、丁影。そしてゲーム最恐キャラの一人、敵部族最強の武将である王子、ゼング=タイガ。 まだ成長途上である筈なのにすでに強キャラな王子を相手に、戦いの幕が上がる。
「知ったことか!!」
一人では無理、絶対に。ならば二人でなら? 共に合わせる相生の技、繋がる意識が皇子の予想外の強さを生み出し。手傷を負わせ、丁影も捕らえることに成功する。
「・・・・・・ただの夢なら、いいんだけど」
だが、未来はそう簡単には変わらないようで。 様々な予言が指し示す滅亡、天芳の夢の中に出てきた悪なる神の名。どうも物語は未だ、一筋縄ではいかぬらしい。
人たらしも納得な魅力ある主人公が強くなっていく、真っ直ぐな面白さがあるこの作品。王道めな物語を読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
天下の大悪人に転生した少年、人たらしの大英雄になる 1 ~傾国の美少女たちと英雄軍団を作ります~ (オーバーラップ文庫) | 千月さかき, もきゅ |本 | 通販 | Amazon