読書感想:とある男子高校生のラブコメ観察日記1 ~ハーレム観察編~

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。まず一度目を閉じて、五秒の間に何かラブコメ作品を一つ連想された後、目を開けて欲しい。 ・・・連想は完了されたであろうか? ではもし、その連想された世界に、主人公ではないモブとして転生するとしたら、貴方はどう生きていきたいだろうか? メインヒロインを狙うか、主人公と結ばれぬサブヒロインを狙うか? それとも・・・・・・主人公の人間関係廻りに、友人キャラ辺りの立場で居場所を得るだろうか?

 

 

さて、そんな問いかけもさておき、この作品の感想を書いていきたい。しかしこの作品、割と変わり種と言える。まずこの作品の主人公は、名前もないモブ、一人称により「私」と呼ぶが。そんな私が、日記と言う名の観察日記として記していくお話なのだ。

 

高校入学早々、黒髪幼なじみ系ヒロインの愛(表紙左)と、アメリカ人とのミックスであるギャル、ドロシー(表紙右)に告白されていた平凡な少年、章。

 

さて・・・・・・君たちは一体どんな物語を見せてくれるのか。

 

それを偶々目撃した、私。その胸の中に感じたのは極上のワクワク。我が世の春が来たと言わんばかりの興奮。そのラブコメの様子を一番近くで見続ける為、章にさりげなく接近、まずは連休までの日々の中で人間関係を作り、章を中心とするヒロイン達やバカだがいい奴な友人、幸助といった友人グループの一員となることに成功する。

 

進んでいくのは日々の時間。まずは連休前の合宿、そこから夏にかけてもイベントはあり、そして彼からすれば日常はいつでもイベントに溢れている。小悪魔系スポーツ少女な星や、おどおど系文学少女、すみれといった新たなヒロインの登場を喜びながらこれでもかと観察を楽しんで。時にヒロインに助け舟を出したり、ともっと面白く盛り上げんと暗躍していく事も忘れずに。

 

「彼のことを譲る気は・・・・・・ないよ」

 

そんな中、「私」の周りにも人間関係の気配。逃がす事はない、君もまた主人公なんだと言うように。実は従姉妹であった生徒会長、透華に気にかけられたり。リアル名探偵系ヒロインであり中学時代からの友である欄に接近されたり、実はすみれが幼馴染であったと判明したり。

 

「否定はしないのかい?」

 

特に一番ぐいぐい来るのが欄。彼の相棒は自分だ、とどんどん主張してきて、彼の事を知りたいと接近してきて。名探偵としての頭脳が導きだしたのは一つの真実。それは日記の書き方から導き出した、「私」という人間の正体。

 

「・・・・・・君がいたからだ、君がいたから、楽しいって思えた」

 

「でも、俺はもう、お前がいない日常は考えられねーよ」

 

「私」の悔恨、自身が生きていてもいいのか、という心情の吐露。 それに真っ直ぐに言葉を投げかけるのは、章や幸助。観察対象であった、けれど確かに友情をはぐくみ共に青春を過ごしていた「友達」達。

 

「君が何を思おうと勝手に君の傍にいる!」

 

そして、欄は真っ直ぐに「ヒロイン」らしい言葉をぶつけて。「私」の気持ちは、立ち直りまた日常へ戻っていくのだ。

 

一風変わった形式の、ここにしかない青春が楽しめるこの作品。変化球な面白さを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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