読書感想:センパイ、私と浮気してみませんか? ~幼馴染を親友に寝取られたので、これから元親友の妹を寝取り返したいと思います~

 

 さて、最近ラブコメ界において時々見かけるようになったNTRと書いて寝取りもの、であるが。本家的なNTRものはあまり見ない気がするのは私だけだろうか。まぁ、本来のNTRというのは好みがとても別れるものであり、嫌いな人はとことん嫌い、というものであろう。というか私も大嫌いである、目に入れたくないくらいには。というのはともかく。ラノベにおいてNTRもの、というと。寝取られる理由があったりする、ソフトな事が多いのではないだろうか。

 

 

と言う事でこの作品も、広義的にはNTRものになるのかもしれない。しかしこの作品のあらすじ、嘘をついているのかもしれない。ヒロインである親友の妹、凛花(表紙)はヤンデレと紹介されているが、疑問符が付くほどにそうではない、寧ろ一途で純情キャラである。寧ろヤンデレなのは主人公、俊哉の幼なじみであり恋人でもある愛里の方であろう。そしてこの作品、物凄くドロドロしており。同レーベルの(個人的)伝説、「ラン・オーバー」と似た空気を持っているのだ。

 

愛里と幸せな日常を過ごしていたある日、偶々目撃したのは愛里と親友である真太郎がラブホから出てくる現場。その現場を問い詰める事は出来ず、しかし心に傷は残り。そんな彼の元を凛花が訪ねてくる。

 

「センパイ、私と浮気してみませんか?」

 

「だって私、センパイのことが好きですから」

 

彼女が言い出したのは、自分と浮気するという事。彼女から見て実は独占欲が強い愛里へのいいダメージと、周りが時々引くくらいには凛花を溺愛している真太郎へいい一撃となるから。あと自分は俊哉の事が好きだから。 やり返そう、と提案されて天啓の様に受け入れて。二人の復讐の幕が上がる。

 

「心まで許してないんだからセーフに決まってるじゃん」

 

「もはや病気だな。一人になる時間がそんなに怖いか?」

 

まずは手を変え品を変え、だが愛里と真太郎は気づかれているとも知らず、いつも通り。証拠を掴めぬ中、一先ず俊哉の、実家である和菓子屋でのバイトの時間を変更、証拠を探る事に。その最中、奇しくも同じファミレスに居合わせて。背中越しに聞いたのは、今まで想像も出来なかった二人の素顔。愛里の、どこか壊れたような奔放さ。

 

それを聞き、二人への思いはもう本当になくなり。本当の意味で関係の戻らぬ引き金を引くと決意、愛里に別れ話をし、自分を支えてくれた凛花に告白。真太郎との関係も決定的に壊れる中、彼の様子に危機感を感じた凛花をこっそり家に泊めることに。

 

「あたしね、もうなにもかも滅茶苦茶にしたい気分なの」

 

さて、完全な断裂を以てこの作品は終わりか。となるとこの作品、百三十ページ以内に収まってしまうがそうはならない。 俊哉にフラれた愛里は、今まで見せてこなかった危険性を解き放つ。一般論が通じぬ自分の世界観で生きていて、常に情緒は不安定。故にここからは第二ラウンド。選択を迫る愛里に対抗する為、真太郎の弱みを察知、愛里の釘付けを狙い、その間に愛里の父親である卓二と俊哉の両親に真実を伝え巻き込んで。愛里は学校に来なくなり、これで全ては終わったか・・・・・・

 

「大好き。トシ君」

 

・・・・・・と思えたが。俊哉の予想外の事が二つ。愛里の家庭環境が想像とは違い崩壊している事。そして、愛里の頭の螺子のハズレ具合。 真太郎に騙され人気のない倉庫に呼び出され金属バットで殴られ、監禁されてしまう。

 

行われるのは尊厳も奪う暴力を含むあれこれ。スマホは奪われ絶体絶命。

 

「頭冷やしたらどうですか。月宮センパイ」

 

「ああ、最終ミッションだな」

 

だが一つ、反撃の目があった。それは愛里、ではなく真太郎。彼女とは違いまだ普通の人間性を持つ彼は、もう付き合い切れぬと憂いており。その心の隙間を説得し、無かった友情ではなくつるんできた人間性に訴えて。愛里の知らぬ間、準備を整え。司法の場へ引きずり出す事で決着をつける。

 

「一生飽きないよ。飽きたりしない」

 

その後、裁かれるべき二人はそれぞれに裁かれて。俊哉と凛花は二人、未来へと進んでいくのだ。

 

昨今のラノベとしては中々見ないエグさと陰鬱さがある中、確かな愛情があるこの作品。中々見ないラブコメを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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