
さて、昨今ツンデレなヒロイン、というのは中々見かけないものになってしまったのかもしれない。ヒロインごとに異なる個性に新たな可能性が数々生まれてきた、という見方をすれば喜ばしい事かもしれないが、かつてのラノベ界に数多く存在したツンデレヒロインが好きだった、という方には今のラノベ界は少し寂しいものがあるかもしれない。そんな読者様にはこの作品がお勧めであるのかもしれない。何故ならばこの作品のヒロインである幼馴染、氷菓(表紙左)は結構なツンデレであるので。
「そんなんだから陰キャとか言われるんじゃない?」
氷菓とは家が隣同士の幼馴染の少年、伊織。昔は仲が良かったけれど、中学のある時期から仲が拗れ始め。高校入学前に伊織がとある女子に告白するもフラれ、春休みの間中引きこもり。高校入学し、同じクラス。だが他の生徒たちにはごく明るくフレンドリーな彼女は伊織にだけは毒舌、正に氷の如き態度を取っていた。
「えー、でも氷菓って真島くんのこと結構見てるよね」
氷菓の周りの友人だけが気付いている、意外と伊織の事を見つめていると言う事。普段は毒舌ばかりだけど、心からは邪険にしている訳ではないと言う事。だが何か秘めた思いを垣間見せるも伊織には届かなくて、二人の距離感は変わらなくて。
「お前って・・・・・・―――男じゃなかったのかよ!?」
だが、そこに変化を齎す風がやってくる。その名は陽(表紙右)。伊織のもう一人の幼馴染であり、一緒に居た時期が異なるために氷菓とは面識がなく。そして幼少期は男勝りであった為に性別を男と勘違いされていた彼女。彼女の方は、伊織と仲が拗れる原因もなかったからかぐいぐい来る、まるで懐いてくる大型犬かのように。幼き日のギャップと今の容姿で繰り出されるその態度に、伊織の事は揺れ惑わされていく。
「と、友達同士だったらするっていうなら・・・・・・食べさせてよ」
その関りを見、氷菓の心が嵐の如くざわついて。陽と二人きりの時間を取る伊織に接近し。少しずつ歩み寄ろうとしていく、毒舌を何とか堪えて近づこうとしていく。
だけどまだ届かない。原因を無自覚な伊織、彼からすれば幼馴染としての理想形は陽。心無い、しかし故に正直な一言に氷菓の気持ちは傷ついて。陽に背を押された伊織は、今度は彼女に追いつくために自分から彼女の元へ。
「これからまた少しずつ・・・・・・・幼馴染に戻ろうね」
大切な事、今やるべきは向き合う事。自分の想い、忘れていた切っ掛けをぶつけ合って、お互い片意地張ってたようなもんだと察して。他人から幼馴染へ、戻る約束を。やっと絆は本当の意味で繋がって、もう一度始まるのである。
秘めた思いが垣間見える、その仄かな甘さが良いこの作品。ツンデレな幼なじみが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。