さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は「男装ヒロイン」と聞いてどのヒロインを連想されるであろうか。私は一人思いついているが、調べてみた所で昔懐かしい、ちょっとノスタルジックな空気になってしまったので、明言は伏せさせていただく。年代をばらしたくはないので。では男装ヒロイン、というのは一体どんな魅力があるのであろうか。それ即ち、ギャップ萌えという所にあるのかもしれない。男っぽく見えて、王子様のようで。でも自分に見せてくれるのは少女としての素顔。そんな魅力に、やられた事のある読者様もおられるかもしれない。
ではここで、この作品のヒロインである伊織(表紙)を見ていただきたい。彼女の男装は果たして成功しているのだろうか? どう見てもバレバレである、寧ろ隠してもいないのでは、といいたくもなる。
何故彼女はこんな格好をしているのか。それは主人公である賢次、兄貴分である彼に弟として可愛がってもらいたいからである。
「俺、伊織が女だってこと知ってるんだが」
夏休み、伊織の姉であり賢次にとっては初恋のお姉さんである楓から齎された、夏休みの間遊びに来ると言うお知らせ。しかし、伊織からすればバレていないと言う認識でも、賢次及び他の者達にとっては彼女は少女であることは周知の事実。それでも伊織に合わせる事を選び、バレバレの男装をしてきた彼女を出迎える事となる。
そんな彼の内心を知ってか知らずか。自然に混浴しようと風呂場に乱入して来たり、更には同衾して来たり。あまり成長の感じられぬボディでも、確かに女であるという事を感じてしまい。ゼロ距離で繰り出されるスキンシップに振り回されながらも、様々な夏休みらしい出来事を駆け抜けて。そんな中、明かされる伊織の本心。それは賢次と本当の家族になりたい、だからこそ彼女は楓と賢次を結び付けようとする。
「・・・・・・ボク、お兄ちゃんが好きなんだ」
だが、何故か。訳も分からぬまま、二人が仲良くしているのを想像するだけで胸が痛む。それは「成長痛」なのか。確かにある意味においてはそうなのかもしれない。それは心の成長痛。胸の中にある初恋が萌芽する痛み、なのである。
その痛みを捨てようと、無視しようとする伊織。彼女に明かされるのは、賢次が既に楓にフラれているという事実。その事実を知った時、新たなルートのフラグが立つ。それは彼女と賢次が家族になる、という彼女の望みも叶える道なのだ。
だがまだ、彼等の新たな道は始まったばかり。だからこそ、これから先は本当の意味で未知なのだ。
グイグイ来る年下女子に萌えたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
男装したら昔みたいに甘えても恥ずかしくないよね、お兄ちゃん? (講談社ラノベ文庫) | 猫又 ぬこ, 塩かずのこ |本 | 通販 | Amazon