読書感想:顔の良すぎる幼馴染と、気づいたら朝チュンしてた件

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は重い愛はお好きであろうか。別に自覚がある訳ではないのだが、私は周囲からみると重いラブコメが好き、と見られているらしい。それもどろどろでグチャグチャしているほどに。という訳でこの作品の帯、をまず見てほしい。どろ甘である。甘々ではない。ドロドロなのである。それはどういうことなのか。

 

 

その答えは今から語っていくが、確かなことを先に一つだけ申しておこう。それはこの作品のヒロイン、美月(表紙)の思いは重くて甘い、いや重いというのをちょっと超えているかもしれない。どこか壊れた彼女の深く、重力すらある愛に囚われていくラブコメなのである。

 

舞台女優だった母親を持ち、中性的な容姿で密かに人気ながら自己評価は低い少年、伊織。家が隣同士の幼馴染、美月。彼女はトップモデルの如き存在感と色香を持つ学園においても絶対的ナンバーワンの美女。

 

(なんで当たり前に、朝ご飯作ってるんだか)

 

しかし、実質一人暮らしの美月は、伊織の両親の三年前からの海外勤務から、彼の家で暮らしている。まるで家族、のような距離感。その瞳の奥、時に揺らめくのはどこか危うい光。一緒にいる事を受け入れてはいるけれど、ずっと手が届かない彼女を追いかける事も諦めていて、いつかは離れていくんだろうなと思っている伊織。

 

「―――私なら、どう、かな?」

 

そんな彼の周りにある日一つの動きが。彼に告白してきたのは通称「学年で二番目に可愛い」少女、琴羽。告げられる告白、しかし伊織は美月にどこか想いを残しているから断るも、琴羽は諦めぬと毅然と告げて。どこか宙ぶらりんな関係になる事に。

 

「―――伊織がいたから、あたしは人間になれたよ」

 

それを知ってか知らずか、不意に美月は動き出す。今まで来なかった伊織のバイト先に顔を出したり、と彼の生活圏に入り込む。まるで自分の存在を刻むかのように。彼女は言う、自分は伊織がいなければ今も人形のままだったかもしれぬ、とあの頃と同じどこか無機質で虚ろな瞳で。

 

そんな中、伊織が不意に出る事になるのは、学園祭で開かれるミスターコンテスト。ミスコンに出る琴羽が、美月に挑むことを伝えてきて。自分もバイト先の店長から、一度くらい何かに本気になってみるのもいいと背を押され、本気で挑むことに。

 

自分の武器は何か、それは一度離れてしまったピアノ。当時の先生に特訓を依頼、本番、トラウマとなった曲で敢えて挑んで結果を残し。琴羽に改めて、断りを入れて。今まで待たせてしまった美月に、自分から思いを告げて。

 

「もう、離してあげない」

 

―――だが、伊織は知らない。美月の人間性は、どこか壊れていることを。伊織にしか心が動かない、彼女にとって彼は自分の半身。だから、自分たち二人以外はどうでもいいと望んでいることを。 二人きりの世界を望んでいる、という事を。

 

まさに重力すら感じるビッグラヴ、実に美しい。一種、芸術作品のようですらある。そんな、重い彼女に溺愛されるラブコメを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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