読書感想:脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか?

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は棗恭介というキャラをご存じであろうか。端的に言うと主人公の属する友人グループのリーダーであり、主人公にとってはよき兄貴分、そしてヒロインの一人の兄な訳であるが。例えばゲームやアニメにおける兄キャラとは個性的な事が多いであろう。トリックスターなタイプであったり、妹が好きで暴走してしまったり。この作品はそんな、「兄」に転生してしまった者のお話なのだ。

 

 

「さて、次はどう攻めるか。悠長にしてる時間はないぞ」

 

ごく普通、しかし顔は良い方な少年、栄治。彼はある日、お葬式の場で前世の記憶、三十年くらい生きていた記憶を思い出し。しかし特に変わる事もなく。そんなある日、親戚の子であり両親を事故で亡くしてしまった鈴那(表紙)が義妹になることになり。彼は思いだす。この世界、前世でニッチだった泣きゲー、「恋色に染まる空」の世界じゃないか、と。

 

ではそんな世界で栄治の役割は、というと。ギャグ特化な脇役、鈴那の兄という立場。一先ず平凡に生きようか、と思う中、心が壊れ表情が死んだ鈴那にどう接していいか分からず。

 

「それ、本気で言ってるの?」

 

彼女の事は三年後、ゲーム本編の時間軸で主人公に何とかしてもらおうとは思うけれど。今はちょっと疎遠になってしまった幼馴染、和奏に激怒されてしまい。その瞬間、転生したと言う事実を今更ながら思い知らされ。彼は和奏にも背を押され決意する。三年後を待っている余裕はない、その気もない。義妹となった鈴那を攻略、してしまおうと。

 

しかしここで表紙をもう一度見てみて欲しい。「攻略」と書いて「しあわせに」、と読むのである。恋愛的な意味で攻略、するのではなく。家族として、幸せにするのだ。立ち直らせるのだ、受け入れていくのだ。

 

まずは勉強を一緒にする事で距離を詰めようとし、和奏に協力も仰ぎ、彼女も一緒に鈴那の事を気にかけて。 時に近づいて、時に見守って。その中、見えてくるものがある。

 

それは鈴那の心の傷はそう簡単に癒えるものではないと言う事。 トラウマになるレベルで刻まれてしまっていると言う事。察するのは栄治の失敗。何故ゲームの彼は彼女を救えなかったのか。それは真に彼女の心に迫れなかったから。彼女の赦しになれなかったから。

 

「俺はお前と家族になれて、嬉しい」

 

だけど今の自分は違う。同じ痛みをある意味で知るからこそ、分かるものがある迫れるものがある。 その思いで今度は手を伸ばすことに成功し。鈴那の心を溶かす事に成功していくのだ。

 

家族ものとしての面白さが前面に、温かさあふれるこの作品。温かみに触れたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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