読書感想:身内の世話に疲れた俺が選んだのは学園のお姫様と家族になることでした

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は「ヤングケアラー」なる言葉をご存じであろうか。意味を簡単に説明するのなら、家族の介護をする若者、という感じになるのだろうか。個人的な考えとしては、そんな存在はいてはいけない、一刻も早く撲滅されるべき、とさえ思う。若者は若者らしい日々を享受するべきだと思う。ならばケア対象を施設なりに入れれば、となればいいのだがそう簡単な話でもない。介護という職種は離職率が高く、それでいて少子高齢化社会の為高齢者は増えるばかり。施設に入りたくても入れない、というのもあるのだ。

 

 

という訳でこの作品はヤングケアラーである、どころか家族のサポートに励むも報われぬ少年、燐音が、学園で「姫」と呼ばれる少女、姫乃(表紙)と「家族」になり。報われていくお話なのだ。

 

高齢の祖母の介護、だけではなく研究の傍らタレント業に励む大学生の兄、御幸のサポートやアイドルである妹、夜歌やフィギュアスケーターである夜歌の双子の妹、朝那のサポートも兼任する燐音。しかし小学生の頃から身を粉にしても報われず、それどころかそれぞれ夜歌と朝那にべったりの父母は互いに浮気している、というどうしようもない状況。とうとう祖母は亡くなり、燐音が葬式も準備するも御幸が話術で成果を持って行って。自分は家族として無視されている、それどころか自分の誕生日すらも覚えられていないという状況に絶望し、家を飛び出してしまう。

 

「私と家族になりませんか」

 

そんな彼を助けたのが姫乃。名家の生まれであるも婚外子、らしく愛に飢えている彼女。彼女が一人暮らししている家に泊めてもらう事になり、家族としての疑似的な日々が始まる。

 

「燐くんはもっと開き直るべきなんです」

 

彼女の愛はぐいぐいと、だけどまっすぐ温かく。今まで求めていたものはそこにあって。段々と元気を取り戻していく燐音は、家族から離れた事で、初めて家族という枠組みの外側から向き合う事に。

 

ここで一つ、幸運だったかもしれぬ事がある。それは言うに及ばぬ愚者、燐音にすべて押し付けるのが当然と考えるドブカスな両親とは違い、兄妹はまだ、歪みはしているがまともな方だった、という事であろう。燐音という大黒柱を抜きあっという間に揺らぎだす家族。最初に接触してきた夜歌は、姫乃に怒られ燐音と向き合い、仲直り。

 

「だからお兄さんは使われる側なんですよ」

 

「・・・・・・今までありがとな」

 

そして御幸は、今まで当然と思っていた燐音のサポートのおかげで自分があった、いつの間にか弟は大きくなっていた、という前提からの間違いを突き付けられて。やっと自分の間違いを反省、一歩踏み出し燐音に頭を下げる。

 

「義理の妹共々健やかな学園生活を皆さんと過ごさせてね」

 

「燐音にはボクだけいればいい」

 

だが、まだまともな奴もいればダメそうな奴もいる訳で。突如転校してくる、姫乃の義理の姉の鈴華。そして、朝那が動き出す。常に燐音と自分の為だけに生きていた、彼に病的なまでの愛情を抱く妹が動き出していくのだ。

 

ちょいとビターな空気とざまぁの中、包み込まれるような甘さがあるこの作品。ちょっと重めな作品を見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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