読書感想:我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.2 魔王軍、ぶった斬ってみた

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた - 読樹庵

(hatenablog.com)

 

 さて、前巻刊行から既に二年くらいの時が経過している訳で、同時にデビューした作品がまぁそれぞれの道を辿っている中、この作品はまさか力の入れように反して一巻で終わってしまったのでは? と思われた画面の前の読者の皆様もおられるのではないだろうか。しかし安心して欲しい、打ち切りと言うのは無かったらしい。とりあえず前巻の内容は上記の記事を参考にしていただいて、今巻では何をするのか、というと。今巻では表紙の通り、主にジンに焦点を当てていくのである。

 

 

「なんか、思ったより面倒な町に行かされるんですね・・・・・・」

 

前巻において、自分に正直になりその力を発露させ。一先ず我を忘れぬように必死に落ち着きつつ、悪党を仲間と共に完全討伐。そんなホムラ達に命じられたのは、衛士は派遣しているが実際の管轄は別の国である港町、オーレリークで発生した事件の調査依頼。ジンの使う日本刀によく似た武器の目撃情報もあるそこへ、同行者であるアレク達を振り回しつつ向かって。そこで待っていたのは、妙な光景であった。

 

町の方は何やら妙な娯楽に賑わう、一種の活気。港の方は交易規制と魔王の再来の噂の広まり。魔王の呪血を広めると言う新たな手口、を聞きつつ目撃するのは妙な娯楽、と言う名のこの街の歪み。代替わりした領主の娘、エリーリヤによる罪人の拷問ショー。

 

嫌悪感を覚えつつ見学し、何故か町で売っていたスク水を着て海へ乗り出し。そこで目撃したのは、足の生えたサメ型の魔獣、ただし手のひらサイズという可愛い脅威。ひとまず報告に戻れば、彼女達に目を付けていたエリーリヤがやってきて。交易船に乗っていた荷物を回収すると言う突発的な命令を受け、彼女達は連絡の途絶えた漁村に向かう事となる。

 

そこにいたのは、妖刀を握ってしまった事で村人が変じた鬼。やむを得ぬ討伐、その先にエリーリヤの侮蔑と共にその妖刀はジンに託され。程なくし、サメ型魔獣の長である魔族、ナージャが魔獣達を率い報復のために襲撃してくる。

 

「己に正直になった某は強いぞ?」

 

戦いの中、妖刀をやむを得ず抜いたジンの脳裏に去来するのは過去の記憶。その中に見出すのは、己の本質。恐怖していたものこそが羨望していたものだと気づき。目が覚めたジンとナージャの戦いは痛み分けと終わる。

 

 

その先、明かされるのはナージャの本当の目的。この街にて滅ぼすべき真の悪の存在。それをぶっ飛ばす役目、それはケンカを売ってしまった事でホムラに押し付けられ。援護抜きで戦う事となる。

 

「制裁でも、勝負でもない。やるべきは、救済!」

 

真の悪、その裏に見えるのは魔王軍の手引きの影。ならばやるべきは炎による制裁ではなく、救済。焼却するのではなく、救う為に。今度は自分の意思で、ホムラはその炎を炸裂させるのである。

 

物語が円熟しつつ、様々なものが見えてくる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.2 魔王軍、ぶった斬ってみた (角川スニーカー文庫) : すめらぎ ひよこ, Mika Pikazo, 徹田: 本