読書感想:負けヒロインが多すぎる!5

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:負けヒロインが多すぎる!4 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で主人公、和彦の周りに負けヒロイン達が集い、ラブコメが本格的に始まった、かと思ったがどうも一人触れるのを忘れていたらしい、というのが分かるのが今巻である。その触れられていない一人とは誰か。それこそは表紙からも分かる通り、妹である佳樹である。ファンタジア文庫の某作品のように実は血が繋がっていない、なんて事もない正真正銘の妹。故にその思いは届かない、生まれながらの「負けヒロイン」と言ってもいいのかもしれない。

 

 

「・・・・・・誰だと思います?」

 

年も明けて、早一か月。迫ってくるのは節分、を通り越してバレンタイン。乙女にとっては勝負の時節。そんな中、気合を入れて手作りチョコを準備している佳樹が何かを隠している様子に、和彦の心は揺れ動き疑心が増していく。

 

「お、男だな」

 

文芸部の仲間達から指摘されるのは、想像したくもない佳樹に好きな相手が出来たと言う可能性。それを肯定してくる、とある書き込み。もはや一刻の猶予もなし。そう言わんばかりに和彦は杏菜に協力してもらったり、時に檸檬を巻き込んだりしながら。意中の相手らしき存在とのデート?、を尾行したり、中学校に潜入してみたり。佳樹の好きな相手を知る為に、様々な行動をとっていく。

 

 さて、そろそろ画面の前の読者の皆様も何となくお察しではなかろうか? 今までその存在感を、時折強い形で示してきた典型的なブラコンとも言えるあの佳樹が、そう簡単に和彦以外に目を向ける事があるであろうか? つまりはそういう事なのである。学校見学の中、様々な思いが明かされる中で真相もまた紐解かれていく。

 

佳樹の意中の相手らしき男子が、本当に好きな相手。そして兄妹の禁断ものをナチュラルに書き上げるくらいにはブラコンな彼女の想い。

 

「・・・・・・俺も子供だったんだな」

 

「佳樹もまだまだ子供です。お兄様が変わっていくのが嬉しいけれどさみしくて」

 

それは妹だからこその寂しさ。今まで友人がいなかった、けれど負けヒロイン達に関わるうえで変わっていった、ぼっちな少年からラブコメ主人公へと変わっていった和彦への想い。独り相撲はよくない、必要なのは話し合う事。改めて向き合い話し合い、また兄妹の絆は深まっていく。

 

その裏側でまだまだ鈍足だけれど、和彦の周りのラブコメも動き出す。時にフラグを無自覚にへし折られたりしながらも、それぞれの思いが廻りだす。

 

ゆっくりとラブコメを進めていく中、兄妹の絆を見直す今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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