読書感想:あした、裸足でこい。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:あした、裸足でこい。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読まれた読者様がこの間の感想を開いていると言う仮定の下にここからの感想を書いていくわけであるが、前巻を読まれた読者様であれば、前巻の最後、巡ともう一度恋人同士になった千華の衝撃的な発言についてはご存じであろう。巡が千華のいる未来を手に入れる為に奔走する物語であったはずのこの物語は、あの発言により彩を急激に変える。ではその変わった彩は一体、どこへ繋がっていくのだろうか。

 

 

「一度、話をしようか」

 

とにもかくにも、まず大切なのは話し合う事。改めて向き合い判明するのは、千華が少なくとも巡よりも多くタイムリープしているという事。彼女は彼女で未来を変えたいと何度もタイムリープしているという事。その目的は自分の頑張りで達成するべきという彼女の意見に従い、ひとっまずはお互い協力する事もなく。今まで通り、恋人同士であることを選ぶ。

 

 そんな中、千華のアーティストととしての活動は本格的に始まり。その最中、千華の親友である萌寧は千華から卒業するべく、離れる事を宣言し。彼女が新たに熱中できるものを探す為、巡は彼女に協力する事となる。

 

今時の女子らしく、インスタで映えを目指してみたり。スポーツに熱中するためにフットサルに手を出してみたり。それこそ手当たり次第、興味の赴くままに。だが、どこか心の底からは熱中できない。その様子を心配そうに見ながらも、千華を取り巻く環境はかつてと同じく躍進の道を辿り。巡にとっては一周目で起きた大事件である、自然消滅的な形での萌寧と千華の離別の時は迫ってくる。

 

一体、どこに事態を打開する鍵はあるのか? どうすれば何かを変えることは出来るのか。そのヒントをくれたのは、未来の時間軸で相談した真琴の何気ない発言。

 

「―――熱くて美しいだけが、青春なんですかね・・・・・・」

 

その何気ない発言は正に青天の霹靂。そう、確かに言うなれば青春は美しいもの。だが無理に熱く美しくしようと思っても、それは只のメッキにしかならないのかもしれない。青春とは、千差万別。考えても見て欲しい。何気ない日々を過ごしていく、そんな青春だって当たり前である。その人に当てはまる青春は、必ずしも美しくなければならぬなんて事もない。

 

「わたし―――大切にしたいものを、もう持ってたんだ」

 

 そして彼等はやっと気付く。萌寧が大切にしたいものは、既に持っていたと言う事を。未来に向かって羽ばたいていくだけが青春ではない。歩くような早さで何気ない日々を重ねていく、それが彼女にとっての正解であったと言う事を。

 

やっと気付けた萌寧は胸を張って千華の躍進を見届け。協力者を求める巡は過去の時代の真琴に声を掛ける。

 

だがそれは、確実に未来を変えるもの。彼女の本心に触れる時、そこに何が待つのか。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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