読書感想:あした、裸足でこい。3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:あした、裸足でこい。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で千華の親友である萌寧との離別を防ぐことに成功し、確かに一つ未来を変えることに成功した巡であるが。千華との未来を迎える為には何が必要であろうか。それは彼女が巡よりも多くタイムリープしている、その理由を掴む事であろう。タイムリープから一人、抜け出すだけでは意味がない、二人でなければ意味はない。ならば千華の方の願いを叶えるなり、心を変えるなりしなければならない。

 

 

その為にも、まずは理由を知らなければならない。その理由が少しだけ見えてくるのが今巻なのである。

 

少しずつ変わり始める未来の中、かつての時間軸の中で巡ってくる文化祭。千華のアーティストとしての大躍進の機会であり、同時に彼女に手を届かせようとした凡人、春樹先輩の心をへし折ってしまった舞台。その後悔こそが、苦悩こそが縛り付けるもの。ならばこそ、今回こそは勝たなければいけない。有志のステージのスタッフに巡は就任し、千華と同じ舞台で戦う為に奔走する中で。特別な事へと踏み出したいけれど、親との軋轢に揺れる春樹先輩の事を知っていく。

 

特別か、それとも現実か。何方を取るべきか、この舞台の先で見つけ出していくために。

 

「わたしが一番変えちゃうのが―――巡だから」

 

その中で明かされる、千華の本心の一端。彼女の天才性は、輝きは多くの人を捻じ曲げ変えてしまった。その一番の被害者が、巡であると。哀し気な彼女に心を揺らし、巡もまた抱え込み。そこへ迫ろうとした春樹先輩と激突し、雨の中で分かり合う。

 

「お前が幸せになれば、その姿を見せりゃ、それで問題解決だろ」

 

彼によって、部外者だからこその考えで示されたのは、彼女の罪悪感への解答。その思いを抱え、皆にも全てを明かして納得を貰い。改めて一丸となって、千華に挑む為に纏まっていく。

 

「―――次元の違いを、見せてあげる」

 

その姿を見、もう心配ないなと千華は笑い、本気で向かい合う事を宣言し。彼女の小さな変化も巻き起こる、決戦の舞台が幕を開ける。

 

「そうか、つまり俺は・・・・・・」

 

その先、結局未来は変わらなくて。だけど、千華の失踪の理由は判明する。彼よりも多いタイムリープの回数の中で、何度となく彼を見てきたからこそ。自分が傍に居ると彼の夢を壊してしまうから。

 

 

では、何をすればいいのか? 簡単な事だ、夢を成果と言う形で出してしまえばいい。夢を叶えてしまえばいい。それこそが、この時間移動の中で目指すべき未来。彼女の思いを翻す為の最後の鍵なのだ。

 

運命の分岐点の熱さの中、最後の終着点を見出していく今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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