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読書感想:あした、裸足でこい。3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、千華がいるから巡の未来が壊れてしまった、最初にループを始めたのは千華、その後を追い巡もループを始め、幾度となく輪廻する時の中で二人の追いかけっこが繰り広げられている、というのはここまで読まれている読者様であればご存じであろう。では前巻で示された、千華をループから脱出させると言う条件は何だったか? その答えは千華と関わった状態で己の夢を叶える事。その為に必要なのは、小惑星を見つけることだ。
さて、こうも簡単に小惑星を見つけるなどと言っているが、只空を見上げればいいわけでもなく、勿論天体望遠鏡を構えて見上げればいい、という訳でもない。それは高校生にとってはとても大変なもの。それでも、やらなければならないのだ。千華と共に居る未来に進む為に。
「俺一人で、どうにかできるもんでもないしなあ・・・・・・」
しかし、一先ずモチベも高く動き出そうとしてもまず機会はかなり先、更には自分も仲間も実力不足。一先ず地道にいくかと決意する中、先生を通して伝えられたのはなんと直近にある観測イベント。そこに至れるのは一組二人のみ。協力を申し出てきた真琴の手を借りる事となり、巡はまず観測に至る権利を得る為、熾烈な予選会に出場する事となる。
「ただ、俺がしたくてこうしてるだけだって」
「―――好きだからです」
しかし、その権利を得るまでに至ると言う事はどういう事か。簡単な話だ。それは他の者達の夢を踏み潰して進んでいく、蹴落として進んでいくと言う事。 かつての巡にはあった、夢に向かう貪欲さ。だけど千華が経験してきたループの中では、彼女と関わりその輝きに間近で焼かれ過ぎたせいで、その熱は失われてしまった。 そして今、真琴は彼の隣で今まで秘めていた思いを発露させ。審査員の心を二人して動かし、観測の権利を掴み取る。
「どうか、あなたの願いが叶いますように」
だが、忘れてはいけぬ。この作品は巡と千華の時をかける追いかけっこの物語であり、始まる前、舞台に上がる前であった恋心に割り込む余地はないのだ、という事を。未来の変わる予感を感じる千華に背を押され、真琴の思いに心揺れながらも、必死に観測に励む先。そこに待っている結果は、行動はしたけれど、という結果。
「未来にようこそ、巡」
「本当にごめんなさい」
だけどその結果は、その行動は。確かに望んだ未来を引き寄せる事に成功し。しかしその裏、その未来では。取りこぼした欠片、掴めなかった手が最悪の未来、彼女の不在を引き寄せていた。
二兎を追うなら二兎とも得よ、全てを望むならば誰一人として欠ける事なき未来を探せ。最後に取りこぼした欠片を拾ってこそ完全無欠なハッピーエンド。次巻、最後のタイムリープ。
その先に待つ最後の未来、今から楽しみである。