執行モード、リーサル・エリミネイター。そんな電子音声と共に変形しシステムが犯罪者と認めた者を狩るのは、かの有名なアニメ、「サイコパス」の銃、ドミネイターである。という前置きはともかく、機械に全てを監視され何か大切なものを判定され決められてしまう。それは果たして理想的な事なのであろうか。確かにそれで最も幸福な結末に自動的に進めるのならば、理想的なのかもしれない。だが、そんな絶対的な基準に弾かれてしまう者がいたとしたら。それはただ、絶望的な事に過ぎないのではないだろうか。
未来には無限の可能性がある、それはこの作品の世界観においては昔の話。この世界では「現実規定関数」という式の登場により、全ては変わってしまった。明日の天気から各個人の将来の可能性まで、数式と数値により判定されるものになってしまったのである。
「お前らは未来の罪によって囚われることになる」
そんな世界で十五歳を迎える前に未来の計算を行うと言う権利と義務の結果、十二人の子供達が選ばれた。何故彼等は選ばれたのか。それは彼等がどんな未来を辿っても、いつかの明日で何らかの罪を犯すと判定されたから。否応なしに逮捕された彼等、「明日の罪人」は絶海の孤島、「鉄窓島」に集められ。一年以内に未来の無実を証明できなければ死刑と言う条件を意思とは関係なく突き付けられ、共同生活を送る事となる。
集められた子供達の一人、過去にとある痛みを持つ少年、夕日(表紙左)。生活の中の様々な事で溜められるポイントで様々なものを手に入れられ、突如開かれる「特別授業」が大切な時間となるこの島で。ルール無用な中、徐々に彼は子供達と馴染み、不器用ながらに共同生活を形成していく。
だが、生活が進む中で彼は子供達が抱える闇を、欠落を目撃していく。普通に見えた者達の異常性、異質さを目撃していく。
先生たちの中に垣間見える、大人達の思惑。彼等しかいない「明日の罪人」を殺すべきか生かすべきか。垣間見える思惑は、痛みに満ちていて。
「はい。これで証明完了だね」
それと共に事件が起きる。保護していた小鳥の殺害事件、教師の一人の殺人事件。その中で自分の隣に纏わりついていた少女、カナ(表紙右)の歪みを目撃し。その歪みは炸裂し、いきなり危機が訪れる。
「―――許すよ、語木さん」
その歪みは、罪は、誰も許し方を知らぬ。分かる筈もない。だがそれでも、と。どうせ終わりが来るのならと夕日は自身の命を犠牲に許そうとする。終わりを自覚しているからこその投げ方で、彼女を救おうとする。
だが、それでも。これはまだ始まりだ。生き延びた先に待つのは、罪を変え続く未来なのだ。
どこか重厚で鉄さびの匂いがするような、重い味のするこの作品。ここにしかない面白さを読んでみたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。