読書感想:最弱呪術師、鬼神の力に覚醒する

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 妖怪、怨霊、悪魔。様々に呼ばれる怪異というものがこの世界では語り継がれている。妖怪と言う存在は中々に実在を疑うものであり、悪魔と言うものは悪魔祓いの動画を見るともしかするといるのかもしれない、画面の前の読者の皆様にとってはその程度の存在かもしれない。しかし、時にそんな存在は怖いけれど、何処か興味を惹かれる存在となるのかもしれない。

 

 

そういった怪異が「瘴霊」と呼ばれ、人間が古くから受け継がれてきた呪術により祓う為に戦う、とある現代日本。祓う者達を育成する黒東学園に通う少年、邦洋(表紙右)。彼は呪術を扱う為の力、霊力は何とか一般的な量を持ち合わせていながらも、何故か呪術は一切使えぬ落ちこぼれであり、クラス振り分け試験で最下位を取ってしまった。

 

「何もできない自分はもう嫌だ」

 

 だがしかし、運命は唐突に動き出す。突如として迷い込んだ結界の中、何者かに襲われ弱っていた鬼族の少女、煉と出会い。彼女に誘われ、覚悟を決めて彼女を式神とする契約を結んだのである。

 

契約により彼女から彼へと齎されたのは「鬼呪」。最強にして最古の呪術であり、人間には決して扱えぬ筈の力。だがしかし、邦洋の中に眠っていた異端の才能、鬼呪への才能が目を覚ます。元々の相性が良かった、それだけでは済まぬ程の速度で。煉も驚き舌を巻くほどの速度で鬼呪に馴染み、その力を自分のものとしていく。

 

「そなたは規格外という表現がぴったりかもしれんな」

 

陰陽師の始祖、安倍晴明ですらなし得なかった偉業を知らぬ間に成し遂げていた彼。鬼である煉すらも認めるほどの速度で、その圧倒的な力を以て。彼は周囲の大人達を驚かせる程の速度で、訓練用の迷宮を攻略し、あっという間に注目株となっていく。

 

その力に注目するのは、大人だけではない。ひょんな事から仲良くなった学園一の才媛、椿(表紙左)。陰陽師の家系出身ではなく、只人の家系である筈の彼が持ち合わせる力、そしてその真っ直ぐな人間性。そこに惹かれ、友情を結び。コンビを組んで戦ったり、煉に訓練を見てもらったり。友情を結び、どんどんと仲良くなっていく二人。

 

しかし、彼を警戒する者たちだっている。よく思わぬ者もいる。そんな者達に馬鹿にされ、単独で挑んだ戦闘実習。そこへ襲い掛かる未曾有の事態。突如として展開された結界、その中に現れたのは異界より来たりし鬼、啓蟄。候補生では決して勝てぬであろう、恐るべき敵。

 

「それにしても邦洋には驚かされる。戦闘の天才だったようじゃな」

 

 だがしかし、ここには最大の不確定因子がいる。鬼にすら驚かれ認められる、規格外の器がいる。戦闘中も成長を続ける邦洋はとっさの応用性と根性で以て、紙一重の差で撃破に成功する。それは正しく、人が一人では成し遂げられぬ戦果。

 

だがしかし、これは始まりに過ぎぬ。まだ何もかもが始まったばかりなのである。

 

始まったばかりなれど、確かな爽快感と熱さが胸を焦がす、そんな現代ファンタジーであるこの作品。

 

成り上がりものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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