読書感想:まきなさん、遊びましょう1

 

 さて、日本全国津々浦々。怪異というのは様々な場所に存在し、その噂話はある訳であるが。我々読者にとって一番身近な怪異の話、というのは学校の七不思議ではないだろうか。特に「トイレの花子さん」。学校に潜む階位の噂話としては、ごくメジャーなもの。あの話は何処の学校にもあるようなもので、そう考えると花子さんは何人も存在している、可能性すらあるのかもしれない。

 

 

そんな怪異、怨霊に魅入られて。共に怪異の絡む事件に挑んでいくことになる一種のバディものであるのがこの作品である。

 

「―――ボクが保証してあげる。怪異はあるよ。幽霊も、妖怪も、超能力もね」

 

実は密かに怪異の話が数多くする三鏡高校という高校。両親が基本的に帰ってこない為妹である明日香と二人暮らしの少年、諒介。彼はある日、友人である修平から相談を受ける。それは一人暮らしである家にバケモノが出るというもの。彼の家にて目撃したのは、絶対に立てぬ筈の隙間に立つ「隙間女」。何とか除霊できぬか、と手掛かりを求める中でたどり着いたのは学校にある「怪異研究会」と呼ばれる部室。そこにいた先輩、希那子(表紙)は怪異の存在を肯定し。それなりの代償はいるけど、と「まきなさん」と呼ばれる助けてくれる怨霊を呼び出すお守りをくれて。彼女の助言通りまずは対話してみようとしたら襲われて。まきなさん、を呼び出せばやってきたのは希那子で。彼女が解き明かしたのは、そもそも侵入者は二人いたという事。 修平の世話をこっそり焼いていたご近所の透明人間、唯。そして女の子の生霊が同時に存在していた、という事。

 

「・・・・・・その『たち』って、ぼくなんですよね」

 

そして、希那子という怨霊の傍に居ても影響のない、その一点で諒介は見込まれて。まきなさんを呼び出した代償として、怪異研究会の一員となり。幽霊で部屋を長く離れられぬ彼女の代わりに足となり、探偵となることになってしまう。

 

 

彼等の前に持ち込まれる事件、警察から持ち込まれたのは老舗のアングラ闇サイトに投稿された吸血鬼による殺人事件の映像。 校外のお嬢様学校から持ち込まれたのは、学校の鏡に映り込む「ブラッディ・メアリー」。実際に呪われる者も出ている怨霊。 その事件の裏にあるのは人の怖さ、人の思い。

 

「ボクは、犯罪者が、憎いんだ」

 

時に唯に力を借り、事件の背景に迫る中。少しずつ、希那子という怨霊の本質も、また。怨霊となったからには理由がある。この世に遺した未練がある。しかし見えてくるのは生前の彼女がたちの悪い不良グループのメンバーであった、という信じられぬ事実。思い悩むその前に、見えるのは様々な事件の裏に居て怪異をばらまく者の影。故に未だ始まったばかり。何もかもがまだ、見え始めたばかりなのである。

 

オカルトをミステリとして解き明かす奥深いこの作品。深めなミステリが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。