読書感想:迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様もそして私も、幼き頃というのは当然に存在していたものである。幼き頃の自分とはどんなものであったか、覚えておいでであられる読者様はあまり多くはないであろう。しかし、我々は幼き頃、きっと無邪気であった。世間の擦れも知らず、純粋なままで心のままにいられた筈である。

 

 

さて、では何故いきなりこんな前振りとなっているのかと言うと。この作品には幼き子供、平たく言ってしまうと幼女が登場するからである。しかも、かなりのキーパーソンとして。

 

 では一体何のキーパーソンとなるのか。それはこの作品の主人公である明人とヒロインである留学生、シャーロット(表紙右)のラブコメである。

 

過去に抱えた「とある事情」から、親しき一部の者にしか本心を明かさず、まるで自己犠牲のようにクラスで嫌われ者として振る舞う。そんな、学校一の秀才であり同時に問題児でもある彼のクラスに留学してきたシャーロット。清楚で上品、可愛らしい彼女に感じるのは断絶。だからこそ彼は、自分から関わろうとせず一歩引いた態度を見せていた。

 

 が、しかし。ある日通学路で迷子になっていたシャーロットの妹であるエマ(表紙左)を保護した事で彼の新たな日常が幕を開ける。何故だかエマに懐かれ離れたくないとぐずられ。担任である美優から一緒に帰宅せよと指示を受け。帰宅してみれば何と彼女達は、明人が一人暮らしを営むマンションのお隣さんだったのである。

 

今まであまり見知らぬ人に懐かなかった筈のエマ、しかし彼女は何故か明人にまるで実の兄のように懐き、無邪気に彼の家を何気なく訪問し。そんな彼女の保護者として、シャーロットもついてきた事で、エマを鎹にした二人の交流はぎこちなく始まっていく。

 

エマの好きなドミノで遊んだり。日頃のお礼と言う事で、シャーロットが明人に手料理をごちそうしたり。三人で買い物に出かけたり。何故かあすなろ抱きのような体勢で明人とシャーロットが漫画を読むことになったり。

 

 何気ない、けれど確かに温かい日々。それはまるで本物の兄妹のよう、家族のよう。けれど、無邪気さは時に毒となる。無邪気に明人に接するエマを見つめるシャーロットの中に芽生える、言い知れぬもやもや。それを発露させてしまい、すれ違う二人。

 

そんな二人を、今度はお返しとばかりに明人が繋ぐ。エマと向き合い、シャーロットと向き合い。向き合ったからこその方法で解決へと導いていく。

 

『まぁ、いつでも言ってくれたらいいから。俺もシャーロットさんの力になれるなら嬉しいし』

 

 力になれるのなら嬉しい。それはきっと、「嫌われ者」としての思いなんかじゃない。今は名前のない花だけれど、きっといつか「恋」になる花は今、開花を始めたのである。

 

だけどまだ、何も解決していない。明人とシャーロット、それぞれが抱える問題は何も解決してなどいない。

 

それでも、この作品は二人が「幸せ」になっていくお話である。

 

だからこそ、ここから始まる。エマを絆の架け橋とし、繋がり未来が導かれ始める。

 

今はまだ、何も持たぬ二人だけど。何の関係でもない二人だけど。いつかきっと、二人の間をしあわせを集めて満たす日が来るのだろう。いつかきっと、恋の気持ちが勇気に変わる日も来るのかもしれない。

 

そんな日を、待ち望みたくなる。一気に突き進んでいくのではなく、自分達のペースで、自分達だけの形で。

 

だからこそ、今は未だ咲きかけの未熟だけど。この作品には「至上」な甘さが感じられるのである。

 

全てのラブコメ好きな読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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