読書感想:妹よ、落ち着いて聞け。お前のカレシ、ボクっ娘だぞ。

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問:ボクっ娘と言えば?

 

答:月宮あゆ(世代が若干古め)(割と鍵っ子)

 

さて、世代と趣味がモロバレしそうな問題と解答はともかくとして、この作品のヒロインはボクっ娘である。普通に女子制服を着ていればバレてしまうであろうが、男子の制服を着ていれば分からぬかもしれぬくらいには中世的である。

 

そんな少女であるこの作品のヒロイン、夏希(表紙中央)。彼女に恋人が出来た事よりこの作品は幕を開ける。彼女の名は小百合(表紙右)。主人公である海翔の妹である中学二年生の少女である。もう一度言おう、妹である。

 

では小百合が百合気質なのかと言われるとそういう訳ではない。彼女は夏希の性別を勘違いし、中世的な美少年として認識してしまっているのである。

 

ならば何故、夏希は小百合の告白を拒まなかったのか。そもそも何故、自分が女の子であると明かさなかったのか。それは全て、海翔の為である。

 

主人公である海翔はフリーターである。だがそれは進学にも就職にも失敗したわけではない。その理由は妹である小百合の為。

 

海翔と小百合、二人はもうお互い以外に身寄りはない。だからこそ海翔は、妹へと最大のリソースをつぎ込めるよう、動ける時間を最大限に確保するために敢えてフリーターとなっているのだ。

 

「海翔先輩、好きです! ボクと付き合ってください!」

 

そのように身を粉にして妹の為に働く海翔の姿を、夏希はずっと同じバイト先で見つめていた。彼女の中にいつの間にか芽生えていた感情、それ即ち「恋」。そしてその想いは海翔の中にもあった。もう画面の前の読者の皆様もお分かりであろう、二人は既に両想いだったのである。

 

だが妹が独り立ちするまでは恋人を作るわけにはいかぬと、恋心を封じ。しかし彼氏が出来て舞い上がる妹に徒に真実を告げる訳にもいかず。

 

故に二人は協力関係を結び、夏希の正体がバレぬように起こり得る全ての可能性を想定したり、性別がバレぬよう綿密にデートの計画を立てるなど奔走する。

 

「先輩が恋心を封印したって無駄ですよ! だってボクがどきどきしますから!」

 

「得意気に言うことか!? どきどきしないように頑張ろうぜ!」

 

だがそれは、図らずも二人の距離を縮めるどきどきの連続となり、二人の思い出を積み重ねる日々となっていく。

 

つまりはそういう事である。ラブコメと漫才めいたやり取りに彩られた、気軽に楽しめるポップなラブコメと言うべき作品であり、何も考えず肩の力を抜いて読めるからこそ面白いのである。

 

笑えてほっこり出来るラブコメを読みたい読者様、家族の絆も楽しみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

妹よ、落ち着いて聞け。お前のカレシ、ボクっ娘だぞ。 (講談社ラノベ文庫) | 猫又 ぬこ, 悠理 なゆた |本 | 通販 | Amazon