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読書感想:夢見る男子は現実主義者 3 - 読樹庵 (hatenablog.com)
二学期が始まると思ったか? あれは嘘だ。そんな言葉は聞こえてきていないがそれはさておき、再びの夏休み編であり、言わば後編である今巻。さて、一体何を描いていくのかというと答えは一つ。前巻でバイト先の同僚となった級友、一ノ瀬さんとの関係である。
「で、できるようにしますから! やめさせないでくださいっ!」
古本屋バイトという職業にはあまりにも似合わなそう、というか適性的に考えても微妙そう。思わず正論をぶつけてしまい泣かせてしまい、あまつさえ土下座させてしまい。罪悪感に攻撃を受けながらも、とりあえずバイトの同僚として働く事になる渉。
激しい後悔に苛まれながらも、先輩として関わらぬわけにもいかず。しかし一体、どうやって接したらよいのか分からない。
「―――悪いのはあんただけじゃないわよ」
そんな彼の助けとなるのは、この作品のメインヒロインである愛華に他ならぬ。二回目の夏川家への家庭訪問。そこで若干強引ながらも聞きだされた、騒動の顛末。
「”明日その子から話を聞く”。それがあんたの罰よ」
与える予定だった罰を引き合いに出され、手荒ながらも激励され。渉は一ノ瀬さんと向かい合う事を決める。
向かい合えば、初めて見えてくるものがある。気の弱くて大人しい彼女の素顔が。決して折れぬ、その心に一体どんな芯が秘められているのか。
「―――・・・・・・兄離れ、したくて」
甘えたくても甘えられぬ兄がいる。だからこそ大きくなりたかった、甘えなくても良いくらいに。
「一ノ瀬さん、普段からそうやって顔出した方が良いと思うけどな・・・・・・―――は?」
長い前髪の奥の向こう、誰よりも魅力的な一輪の花、可愛らしく奥ゆかしい笑顔がある。
知れば知るほど、放ってはおけなくなってくる。先輩と後輩として、何より仲間として。力になりたいと思うから。
「―――それが全部無駄になるなんて、納得できるわけねぇだろ」
だからこそ、渉はまた誰かのために立ち上がる、奔走する。共に働いた一か月は決して無駄ではないと思うから。簡単には失いたくなかったから。
ひと夏の出会いと経験は、渉を成長させる一歩となり、一ノ瀬さんを渉へと引き込む風となる。それで面白くないのは誰か、無論愛華である。
気が付けば彼の周りには沢山の女の子がいる。それを見ているともやもやする。それを自分に問いかけてみれど、答えは返ってこない。
今も尚、自覚に至らぬその想い。だが萌芽の時は、きっともうすぐそば。その想いが芽生えた時、愛華はどんな景色を見るのか。
前巻を楽しまれた読者様、やっぱりもどかしいラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
夢見る男子は現実主義者 4 (HJ文庫) | おけまる, さばみぞれ |本 | 通販 | Amazon