読書感想:勇者殺しの花嫁 II ―盲目の聖女―

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:勇者殺しの花嫁 I - 血溜まりの英雄 - - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で魔族の所謂お目こぼしにより人類は生存している、とも言える意外と薄氷の上な状況が判明してしまった訳であるが。そんな中でも、アリシアやシオンたちは生きていかなくてはならず。しかしこの作品における宗教、大きな力を持っているという事はどういうことか。画面の前の読者の皆様も何となくお察しではないだろうか。

 

 

ラノベにおける大きい組織というのは得てして、内部に歪みだったりお見せ出来ない闇があったりする訳で。そんな部分が牙を剥いてくるのが今巻なのだ。

 

「故に、君には聖女様の護衛について貰おうと思う」

 

前巻の白狼将軍との激闘の傷も癒え、賞金も得たシオンが一休みとしてまだそばにいる中。アリシアへといつものクソ眼鏡、サラマンリウス枢機卿が持ってきたのは聖都にいる盲目の聖女、ネヴィッサ(表紙)を護衛せよという任務。教皇様は巡礼の旅にて不在、多くの聖騎士たちは出払っていて人員不足。よって彼女達に白羽の矢が立ち。シオンを連れさっそく聖都へ向かう事に。

 

かの聖都で見かけたのは、「悪魔憑き」、悪魔の血を宿してしまった事で悪魔の特徴が出て排除対象となった子供達。そんな子供達を守らんとするネヴィッサを見、この街に転属となっていたアリシアの、孤児院での縁者であるカロル神父とも再会する先。前巻で負った怪我の輸血がきっかけで、アリシア人狼の特徴が表れてしまう。

 

「この街じゃねぇ。教会の内部に、だ」

 

彼女に接触してくるのは復讐に燃える暗殺者、ヴェール。ネヴェッサの調査を依頼され、その途端に知るのはネヴェッサの性に溺れる隠れた顔。知ってしまった事で彼女の距離が近づく中、飛び込んできたのはカロル神父の惨殺事件の一報。心揺らし焦燥に駆られるアリシアは手っ取り早く行こうと悪魔憑きたちを、憎しみに駆られて拷問しようとし。シオンに止められ、カロル神父を知るシスターに慰められ。だがシスターの一言から、意外な人物が捜査線上に浮上し。調べてみると、犯人はそいつだと指し示される。

 

「 私の救済を拒んだのです。 仕方がないではありませんか 」

 

明かされるのは、自分だけの救済、一方的な救いを押し付けるものを掲げた、救済という愛に歪んだ悪。乱入してきたヴェールと共に迫る中、操られたシオンが敵として立ち塞がり。

 

「私は、貴方を救います」

 

それでも諦めきれるわけがない、だから戦うしかない。救済に頼らぬ生き方を見せつける為に。 アリシアの一か八かの賭け、そこより無我夢中で目覚めるのは魔の力。新たな力、その先に起きるのはクソ眼鏡の失踪事件。

 

更に闇深まる中で関係が変わる今巻、前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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