
前巻感想はこちら↓
さて、前巻より、出雲、及びその背後にいる何者かによる世凪を救うためのプロジェクト、に海斗が巻き込まれていくという話が始まった訳なのだが。果たして世凪を救う、という目的は何故海斗に託されているのか? そもそも何故、海斗の記憶を消す必要があったのだろうか? その答えは前巻、何も見えてなかった訳である。では今巻、何か見えてくるのだろうか。
先に言ってしまうと今巻、見えるのは一端に過ぎず。そもそも目的と言うのは語られる事はなく。しかし夢の中、そこを進むしかない巻なのである。
「三日あげる。直しなさい、命令よ」
進む第二の夢、それはエリザベス朝のロンドン、という現実世界からすればそれこそ遥か昔の時代。海斗が体験する意識、それはウィリアム・シェイクスピア。今はまだ歴史に名を遺すほどの人間ではなく、ロンドンの片隅で父親の酒場を切り盛りするだけの青年。ある日彼の元を訪ねてきたのは、貴族らしき女性、オリヴィア。親友である宣教師、テッドに市井に流してもらっていた、手慰みに書いた原稿を買い取っていたらしい彼女に書き直しを命じられ、怒りを抱きやってやると新作を仕上げ。しかしオリヴィアは婚約者であるスペンサーと観劇に出かけていて。気が付けば酔いの勢いでスペンサーの屋敷の一部を燃やしてしまい、オリヴィアに命を救われ彼女の奴隷として、「グローブ座」という一座に役者兼脚本家として加えられることに。
「すごいな、ずいぶん様子が変わった」
「おれに―――世界を変える物語を、書かせてくれ」
現実世界、出雲への不信感はまだ拭えぬ中。世凪の様子は確実な変化を始める。今までは自意識が希薄だったのが、自分の意思というものが芽生え始め、羞恥心のような感情も芽生え始め。夢の中、テッドの死をきっかけにウィルとして、本格的に脚本家への道を進み始める。
夢の世界、そこには何が待つのか。それはシェイクスピアとしての人生。悲劇も喜劇も書いてきた、彼自身の悲劇。女優と言うものがまだ許されず、世界は厳しく。そんな中でも仲間と共に、オリヴィアと共に挑んで確かな傷跡を刻み込み、それでも彼女を得られなかったという人生。
「もう、あなたの記憶を奪う必要はない。世凪の自我の不定状態は脱しました」
「三人目は、わたしたちほど甘くない。一筋縄ではいかないわよ」
二つ目の夢の先、出雲から伝えられたのは、二つ目の夢の終わりにたどり着いたのは初めてであり、出雲は廃棄された所を海斗に拾われ修理され、三人で家族として暮らしていたという事実。つまりここからは三つ目の夢、何度も記憶を消されやり直した中で一度も辿り着けなかった場所。夢へと入る前に現れたすももとオリヴィアは注意を促してくるのである。三人目は甘くない、世凪のすべてを受け入れる覚悟はあるかという事を。
一体三つ目の夢、そこに何が待つのか。最後の夢の先、全ては明かされる時が来るのだろうか。
二つ目の夢が描かれる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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