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読書感想:日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればこうは思われたのではないだろうか。この作品、果たしてラブコメと呼んでも大丈夫なのだろうか、と。主人公である伊織と双子の姉である詩織、そして毒親である母親との対決。それを真正面に出しているこの作品は、果たしてラブコメは始まるのであろうか、と。
しかし、どうかご承知いただきたい。そして安心していただきたい。二人との決着をつける事は彼にとって必要な事であり、それを終わらせぬ限り、ラブコメは始められないのである。
そしてそれさえ乗り切ってしまえば、後はラブコメをするだけ。その為にもきっちり、これ以上ない形で決着をつけるのが今巻の前半の流れなのである。
最大の復讐、それは親権を停止させる事。その証拠を探す為、そして詩織と母親を破滅へと追い込む為。総司達とそれぞれの役目に分かれ、行動を開始する伊織。
証拠を求め訪れた忌むべき実家。そこで手に入れたのは、母親による経済的ネグレクトの証拠。しかし間髪入れず、母親たちは詩織のアイドルデビューと言う対抗策を切り出してくる。
スキャンダルを避けると言う名目の元に事務所を味方につけた詩織たち。只の子供達である伊織達に逆転の目はあるのか。
「伊織、私の子になりなさい」
否、心配する必要は何処にもなかった。伊織だって愛してくれる大人がいる、味方になってくれる大人がいる。知己の相手であるオリバー大佐が彼へと手を差し伸べ、彼の息子となることになり。彼の手も借り、遂に復讐の一手は為る。親権喪失、という母親にとっての最悪の一手が。
『覚悟しろよチーナ。俺、本気出すから』
『何の事か分からないけど・・・・・・いいよ。受けてたつ』
更には詩織に、抑止力を握り優位に立ち続けると言う刃を突き付け、ここに彼の復讐は終わる。
終わったのならば、後は始めるだけ。気付く事を許した伊織の新しい物語はここから、そして二人のラブコメもここから始まるのだ。
文化祭でデートし、後輩に彼女は自分の物だと示したり。文化祭を越え迎えた聖夜、恋人達の日に勝負を仕掛けるべくデートしたり。
『チーナ、好きだ』
その勝負の場、不意のアクシデントで亡くした家族を思い出し流れるチーナの涙。その涙を拭うかのように、伊織の口から自然と告白の言葉が紡がれ。二人の関係はここに、結実の時を迎える。
やっとここまで辿り着いた、奪われるのはもうおしまい。
新たな家族であるリリー(表紙右)も得、二人のラブコメは本当の意味でここから始まるのである。
苦さを越えた先の甘さを見てみたい読者様、前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
日本語が話せないロシア人美少女転入生が頼れるのは、多言語マスターの俺1人2 (講談社ラノベ文庫) | アサヒ, 飴玉 コン |本 | 通販 | Amazon